幕間5 『月刊野球少女』編集部にて ~夏大会総括と秋季大会展望編~③

「黒井さんがいなかったら、星空学園に野球部はできなかったんですから、黒井さんのおかげでもありますよ!」


「いや、わたしがいなくてもあの子たちなら勝手に野球部を創っていたと思うわよ? 行動力凄かったし」


初めはバッテリーしかいなかった星空学園女子野球部がどんどん人を増やして試合ができるようになっていったのを思い出して懐かしくなってくる。


当初は教師の中で女子野球部の設立に賛成したのは黒井だけだったが、湊唯筆頭に部員たちが頑張って、どんどん賛成してくれる教師が増えていく過程はなかなかに気分が良かった。


「黒井さんが生徒たちと一緒に一生懸命頑張ったおかげですよ。そのおかげで、岡山の女子野球が賑わっているんですから。エースの湊唯は女子野球ブームを作るきっかけになったし、ライトを守っていた雪下恋乃れのは星空学園の監督をしているし、湊唯と息ピッタリだったキャッチャーの……。あ、待ってください!」


しみじみと語っていた笹川は突然思い出したように大きな声を出した。野球の話をしているときの真剣な表情が一気に抜けてしまっていたように見える。


「いきなり大きな声出して、どうしたのよ?」


「わたし今日合コンなんで、定時に上がるんでした!」


「え、ちょっと待ちなさいよ。そういうことはもっと早く言いなさいよ」


別に私用で定時にあがるのは何ら問題ないけれど、夏の大会が終わったばかりだし、これから大至急秋の中国地方に関する展望記事を書かないといけないというのだから、もっと早く言っておいてほしかった。すでに16時を回っている時計にチラリと目をやる。


「だってー、今日のお昼休みに合コン決まったし、しょうがないじゃないですかー」


不機嫌そうに、わざとらしく頬を膨らませる笹川を見て、黒井は大きなため息をついた。


「まったく。わかったわよ。今から定時まで秋の大会に向けた打ち合わせするからね。あんたもどんどん意見言いなさいよ」


「はーい」


笹川は一転して笑顔になり、取材用のメモを取り出した。

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