幕間5 『月刊野球少女』編集部にて ~夏大会総括と秋季大会展望編~②

「ま、それはそれとして」


笹川が真面目な顔をして、話題を変えた。


「我が岡山県代表の星空学園もベスト8まで行きましたし、かなり惜しかったですよね」


「惜しかったって言っても準々決勝は大敗したし、はっきり言って期待外れだったわ」


「大敗って言っても相手は涼嵐大付属ですし、ちょっと厳しすぎません?」


「厳しくなんてないわよ。星空学園だって、今年は水瀬玖麗愛ちゃんや、北海道のみさきかなでちゃんと並んで高校1年生BIG3なんて呼ばれている綺羅星ちゃんがいるんだから、もっと善戦してもらわないと! あの子なら涼嵐大付属相手でももっとできたはずだわ! あの子の実力はあんなもんじゃないのに!」


星空学園は初回に凪原綺羅星の立ち上がりを狙われて5失点したのが致命傷となり、そのまま7-0と完敗してしまった。


試合が終わって他のチームメイトが泣いている中、涼しい顔をして球場を去った凪原綺羅星の姿を思い出しながら、思わずヒートアップしている黒井を見て、笹川は微笑んだ。


「黒井さん、星空学園のことになると熱くなっちゃいますけど、やっぱり気になっちゃうんですか? OGとして……」


首を傾げながら聞いてくる笹川に、黒井が苦笑しながら答える。


「OGって、わたしは卒業生じゃないわよ。ただ単に野球部の監督を2年程していただけよ。しかも初めの1年は部員が9人いなくて試合ができなかったわけだし……」


黒井は苦笑する。


「でも、その黒井さんが監督をしていた2年間が星空学園と女子野球界にとって、めちゃくちゃ重要な期間だったじゃないですか。星空学園は強豪校になって、女子野球界は一気に注目を浴びるようになりましたし」


「それはわたしじゃなくて唯ちゃんのおかげでしょ?」


野球をしている女の子に好きな女子選手を聞いた時、多分9割の子は湊唯を上げるだろう。そのくらい、彼女は女子野球の人気に貢献した。


別に湊唯の高校時代の監督がわたしじゃなくても、間違いなく彼女は活躍して人気になっていただろう、と黒井は思う。


けれど、笹川は大きく首を横に振った。

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