第217話 秘密の居残り練習④
「ダメだわ……。なによこの球。凄い威力じゃないの……」
真希は守備練習が終わった後、凄美恋の球を打つ為に打席に入ったのだが、先ほどから何度も何度もストレートにバットが空を切っていた。
凄美恋のストレートは常時110キロを超えていて、女子の中ではそれなりに速く、やはり今までほとんどバッティング練習をしたことのない真希のバットには簡単には当たらない。
しかも、思っていたよりもきちんとコントロールされていて、ほとんどの球が打ちやすいようにど真ん中に近い場所に投げてくれているのに、それでも全然当たらなかった。
「凄美恋の球、もっと酷いコントロールと思ってたけどそんなに悪くないのね……」
「酷いコントロールと思ってたって、本音ぶっちゃけすぎやろ! ……でもほんまやな、バッティングピッチャーしてたら緊張せえへんからか、今日はなんか調子ええわ!」
「ねー、すみれちゃーん、遅い球変化球とかも投げられるー? おねーちゃん速すぎて全然打ててないから、遅いの投げてあげてー」
ネクストバッターズサークルの辺りから、咲希が大きな声でリクエストした。
真希は別に遅い球を望んでいたわけではないけれど、たしかに速球は打てる気はしなかったから、小さく頷いておいた。
「ええよ! 今日はなんか調子ええし、なんでも言ってくれたら投げたるわ!」
そう言って気分良さそうに凄美恋が投げた次の球だった。
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