第201話 合宿所へ向かおう②
「じゃあみなさん、適当に乗ってもらったらいいですわ」
怜がマイクロバスに乗車するよう促した。春原家のお抱え運転手の人が運転してくれるということでなんだか緊張する。
「怜先輩のお家、やっぱりお金持ちなんだね」
千早に言われて華菜はほんとね、と同意した。公共交通機関で行くのが難しい自然豊かなところと聞いていたからどうやって行くのかと思ったけど、怜が移動手段まで自力で用意してしまうなんてなかなかの力技である。
みんなで一緒にバスに乗って移動していると、なんだか遠足みたいな気分になってくる。
華菜は中学時代もチームのメンバーと一緒にバス移動をしたことは何度もしたことはあったが、周りは男子ばかりだったので、女子だけで、となるとなかなか新鮮だった。
「お菓子持ってきたから食べる?」
「ええやん、さすが美乃梨! めっちゃ気利くやん!」
美乃梨がみんなにソフトキャンディーのお菓子を配りだしたのでいよいよ遠足みたいな雰囲気になってきてしまっている。
「ちょっと、美乃梨さん、私たち遊びに行くわけじゃないんですよ!」
さすがに緩み過ぎた空気に桜子が注意をする。
「まあいいんじゃない? どうせ向こうについたらしっかり絞られるんでしょ? 行き道くらいゆっくりさせてあげたらいいわ」
由里香がハンドグリップを握りながら和やかな調子で言う。移動のバスの中でもトレーニングを欠かさないみたいだ。
「まあ、由里香がそういうなら……」
「いやいや、ゆっくりしてる場合じゃねえぞ」
助手席に座っていた富瀬が半身で後ろを見て、注意をする。
「お前らな、秋の大会で勝ち上がりたいんだったらそんなのんびりしてる場合じゃねえからな」
そう言って富瀬は9冊のノートを取り出した。
「おい、城河それみんなに配ってくれ」
「なんですか、これ?」
「見ればわかるだろ。ノートだよ、ノート」
「それはわかりますけど……」
疑問に思いつつも桜子が言われた通り全員に配っていく。
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