第194話 県予選決勝戦③
☆☆☆☆☆
「ふふっ、綺羅星は怖気づいたのかしら」
ベンチに戻って来たミレーヌがいつものように胸を張って明るく笑っている。
1回表をしっかり三者凡退に抑えたミレーヌは、勝てば全国大会出場というプレッシャーのかかる試合でも、投球もメンタルもいつも通りの調子で美江は安心していた。
その一方で、守備も良く、ここまでの試合では投げない日でもショートとしてスタメンで出ていた凪原綺羅星が、今日は指名打者としてスタメン起用されていることに美江は不安を抱いていた。
指名打者なら守備に就かなくていいから、その間に投球練習ができ、万全の状態でマウンドに上がることができる。しっかりと準備をした状態で綺羅星がリリーフとして短いイニング全力で行くとなると点を取るのは相当厳しいだろう。
綺羅星が出てくる前に、ミレーヌに楽な状況で投げられるようにしておきたい。連戦の疲れが溜まっている皐月女子がプロ注目レベルの投手を2人抱えている第1シードの星空学園に勝つ為の方法はそう多くはないだろうと美江は思う。
「とにかく凪原さんがでてくるまえにさっさと点を取らないといけないな」
美江はぽつりと呟いた。
美江は言葉通り、しっかり仕事をする。
1回裏、1アウト1,2塁の先制のチャンスで美江に打順が回って来た。星空学園先発の佐藤夏菜子の球は中学時代、美観ガールズのチームメイトとして何度もボールを受けてきた相手で美江は正捕手として長所も短所も知り尽くしているつもりだ。
もちろん、一緒にやっていたときから3年が経っているので、あれからかなり成長はしているだろう。
だけど、細かい癖とか、得意球とか変わっていない部分もあるはずだ。美江はその辺りをしっかり思い出したうえでフルスイングをした。
思いっきり引っ張った打球は、綺麗な金属音と共にレフト方向へと伸びていく。ギリギリスタンドに入りはしなかったが、フェンス直撃の当たりとなり、まず2塁ランナーの木田がホームに戻ってきて先制。
続いて足の速い1塁ランナーの小田原もホームに戻ってくる。ホームは際どいタイミングにはなったが審判の判定はセーフ。美江のタイムリーツーベースヒットにより、皐月女子が星空学園を相手に大きな先制点2点を得た。
皐月女子にとっては幸先の良いスタートになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます