第193話 県予選決勝戦②

「凪原さん効果もあるかもしれないけど、それ以上にこれじゃないかな?」


そう言って美乃梨が華菜たちに見せてくれたスマホの画面にはSNSアプリ、ツイッタァの呟きがあった。


『すずな@ミレーヌ様しか勝たん!

ヤバい!試合見に行った帰りミレーヌちゃんと写真撮ってもらった!!!本物ほんとに可愛い!!ヤバい!!!好き!!!!!(語彙力)』


呟きと共に貼ってある写真にはミレーヌと一緒に写真に写る、顔をスタンプで隠した女の子の写真。多分この呟きの主なのだろう。いいねの数は10万を超えていて軽くバズっている。


「ミレーヌちゃん可愛いかったですもんね」


写真を見ながら千早が言う。


「うん、なんか可愛すぎる女子高生ピッチャーみたいな感じでネット記事にもなっていたみたいだよ」


たしかに、近くで見たミレーヌのルックスは可愛い一般人というレベルを超えていた。都心を歩いていたら芸能スカウトに声でもかけられそうな、一般人とは一線を画したレベルの見た目をしていた気がする。


なるほど、今日はミレーヌ見たさにたくさんのお客さんが駆け付けたというわけか、と華菜は納得した。


「美乃梨先輩はどっちが勝つと思いますか?」


華菜がビデオカメラを回しつつ聞いた。試合の様子は全部録画しておく。スコアブックは美乃梨に頼んでいる。


「普通に考えたら星空だけど、皐月女子に頑張って欲しいってとこかな」


「そうですよね、うちに勝ってここまで来たんですから、ここまで来たら勝ち抜いて欲しいですよね」


「それもあるけどさ、高校野球ファンとして、絶対王者に立ち向かう無名校の小さなピッチャーの構図にはなんかグッとくるものがあるよね」


美乃梨の視線の先には、投球練習をしている小さな菜畑ミレーヌの姿があった。小さな背中に見える背番号18がとても大きく見えた。


整列が終わり、夏の岡山県予選決勝、星空学園vs皐月女子の試合がいよいよ始まった。


皐月女子の先発は、大方の予想通り菜畑ミレーヌだったが、星空学園は凪原綺羅星ではなかった。


先発は3年生のエースナンバーを付けた佐藤夏菜子、美観ガールズの出身で、美江とミレーヌのバッテリーにとって先輩にあたる人物。とくに美江にとっては一学年上の先輩で、美江は実際にバッテリーを組んで、中学時代に共に全国大会に行ったことのある相手でもある。


この佐藤夏菜子という投手も女子野球のドラフト候補に挙げられていて、県内では有名な存在であった。

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