第192話 県予選決勝戦①

7月下旬の日曜日、華菜は千早と美乃梨と共に、岡山県大会の決勝を見に来ていた。


秋以降に向けての偵察がメインではあるけれど、観客という立場から野球を観たことのない千早を一度スタンドに連れて行ってあげたかったというのもある。


それと、女子野球事情に詳しい美乃梨についてきてもらえば、いろいろと助かりそうだと思って華菜が誘ったのだ。もっとも華菜が声をかける前から美乃梨は一人でもこの決勝戦を見に行くつもりにしていたようだが。


「王者星空学園か勢いのある皐月女子かどっちが勝つか見ものだね」


美乃梨がすっかり観客の立場で楽しそうに話す。


「そうですね。今年の1年生BIG3の一人凪原さんと県内トップ捕手の若狭さんの対決楽しみです」


今年入学した1年生の中では大阪にある涼嵐大付属の水瀬玖麗愛、北海道にある室蘭水産のみさきかなで、そして星空学園の凪原綺羅星がBIG3と言われている。


試合開始時間が近づいてきて、改めて球場を見渡してみると、普段よりも激しく熱気を放っている球場の様子が気になった。


「それにしてもなんだか今日人が多いですね? プロ注目の凪原さんが投げるかもしれないからですかね?」


決勝戦だから、いつも以上に人がいるのはわかるが、基本的にはプロ野球の二軍戦くらいまで埋まれば人の多い方だといえる女子高校野球の地方予選の決勝戦。それが今日は1000人近くもの人が集まっていた。女子高校野球の地方予選の試合で今までこんなに人が多く入っているところなんて見た事がない。

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