第187話 試合が終わった日③

「あんた、うちのこと慰めてくれてるんとちゃうかったんかい」


由里香の話になると突然熱くなる華菜を見て、凄美恋が苦笑した。


「慰めてるわよ。でも、由里香さんは学年も上だし、そもそも世代トップレベルなのよ? あんたもわたしもまだまだ比較されるところにすら及んでないの!」


「そんな遠いとこにおるん?」


華菜は黙って大きく頷いた。


「月とすっぽんくらい?」


「ううん、太陽とお饅頭くらい」


「めっちゃ離れてるやん!」


凄美恋がギャハハ、といつもの笑い方をする。元気な凄美恋に戻ってくれたようで少しホッとする。


「元気出たみたいでよかったわ」


「あんたが変な事ばっかり言うせいやわ」


「でもさっきまであんなに凹んでたのに、随分切り替え速いわね」


「うちは熱するときも冷めるときも一瞬やねん」


そう言って凄美恋は缶ジュースのプルタブを開けると、勢いよくコーラを飲んでいく。


「ああ、やっぱりコーラって生き返るわ。疲れが全部シュワシュワって吹っ飛ぶ感じすんねん」


「まあ、疲れた時の炭酸飲料ってそういうとこあるわよね」


華菜が相槌を打つ。その後しばらくしてから、スイッチが入ったみたいに凄美恋が突然大声で叫んだ。


「もう、うちほんまに絶対ピッチャーなんてやれへんから!!」


「ちょっと、突然どうしたのよ。もう日が暮れてるんだからいきなり叫んだら近所迷惑になるじゃない!」


「なんかコーラ飲んでたら元気出て来たわ」


「お酒じゃないんだから……」


そんな風に楽しそうにコーラを飲んでいた凄美恋が、今度はふと静かになった。手に持ったコーラの缶をくるくると、ろくろみたいに回しながら、ポツリと話し出す。

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