第154話 才能無しのドール少女②
「わたしは菜畑ミレーヌ。ポジションは投手希望よ!湊選手みたいな遅い球でも抑えられるピッチャーになりたいの」
みんな敬語で話す中、1人だけ海外の吹き替え映画の少女みたいに天真爛漫な調子で話す独特な子。個性は強そうだけど、この子はすぐににやめる。美江は瞬時にそう判断した。
湊唯が高校時代には速球派として鳴らしていたことも知らないのだろう。軽い気持ちで湊唯の名前を挙げるだけでも、美江の中でやめる子の候補に挙げる要素としては十分なのに。
それに加えて……。
「さすがに小さすぎる……」
思わず声に漏れてしまった言葉が誰にも聞かれなくて助かったと美江はホッとする。
彼女が憧れの選手として名前を挙げた湊唯は174cmの高身長で最速128km/hと、当時の女子の中ではトップレベルの球威のある速球を投げられるからこそ、スパローズに入団してスローボールを操り、1年だけとはいえ、通用したのだ。
だが、目の前の新1年生の身長は150cmに満たないことが一目でわかるようなサイズである。ハーフなのだろうか、可愛らしいブロンドのウェーブがかった髪と大きな目、そしてその小柄な背丈も相まってドール人形にしか見えなかった。
女子の大半は成長期を小学生の間に終える。もちろんこの子の成長期が後からくるという可能性もあるので、まだ伸びる可能性はないとは言えない。
しかし、仮に後々伸びるとしても、当面の間はその小さな体でここで厳しい練習をこなしていかなければならない。多分彼女の体は悲鳴をあげて、すぐにチームをやめてしまうだろう。美江はそう確信していた。
だが、この美江の予想は外れることになる。ミレーヌの背は142cmのままで成長を止めてしまったが、彼女は3年間このチームをやめることはなかったのだ。
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