第148話 膠着状態①

想像以上に菜畑ミレーヌの球は打ちにくかった。


2回表は4番の由里香から始まる攻撃ではあったのだが、由里香がファーストへの強いライナーを打つのだが精一杯で、5番の怜と6番の美乃梨は全くタイミングが合わず連続三振に倒れてしまい、あっさり3アウトとなってしまう。


「なんだか思った球と全然違うところに来るんだよね」


打席から戻って来た美乃梨がぼやくように呟いた。


「わたくしも美乃梨さんと同じですわ。随分遅い球なのに、思っていたところと違う場所に来て全くタイミングが合いませんの」


簡単に打てそうな遅い球なのに、不思議なくらいバットに当たらなかった。バットに当てることのできた華菜と由里香だって反射的についていってなんとかバットに当てただけで、しっかりとミートできたわけではない。


なかなか簡単には攻略できそうにない。


由里香もミレーヌ同様にアウトを積み重ねていく。


2回の裏は由里香のストレートが冴えわたり、5番の土岐舞美、6番の都万見美陽、7番の串崎花音を3者連続3振に抑えた。ここまで由里香はストレートしか投げてはいないが、伸びのある球は初見で簡単に打てるようなものではない。


3回の表裏もミレーヌ、由里香ともに3人で攻撃を終わらせて、3回を終わりどちらのチームにも得点の入らない膠着状態が続いていた。


4回表の桜風学園の攻撃は再び1番の千早から始まる。打順は良いからなんとかこの回に点を取りたいところではある。


だが、千早はあっさり三振に倒れてしまい、1アウトランナー無しの場面で華菜の2度目の打席は回って来た。


先ほどの打席ではセカンドとライトの間に落とそうと思ったのに、予想以上に打球が伸びてしまった。逆に球威のないミレーヌの球なら、少し当てるだけでヒットになり得る。


異様な遅さで向かってくる球は、大きな弧を描きしっかりとストライクゾーンに入ってくる。もはや魔球と呼んでもいいような超スローカーブは捨てて直球とチェンジアップに絞ることにした。


だが、ここでもやはり、まるで華菜の心の中を読んでいるかのように、捨てていた超スローカーブを2球続けてストライクゾーンに投げ込まれ、あっさり2ストライクと追い込まれてしまう。


3球目は明らかに外れたボール球でカウント1ボール2ストライクにした後の4球目、ミレーヌが投げたボールはやはり超スローカーブ。


華菜の狙い球ではないし、一番厄介な球ではあるが、同じ打席で3球も見せられたら、華菜なら十分にタイミングは合わせられた。


上手く拾ってフラフラと打ち上げた打球はポトリとセカンドの後方に落ちた。桜風学園にチーム初めてのヒットが生まれた。


「ようやったで、華菜! うちが返したるわ!」


華菜のヒットに気分をよくして凄美恋すみれが意気揚々と打席に入っていった。

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