第63話 大阪生まれのおてんば姫①
目の前で土埃を払っている人物から流暢な関西弁が発されていることに驚いて、
別に関西弁を話すお嬢様がいてもまったくおかしなことではないのだから、華菜の先入観に他ならないのだが。
「なんやねん?」
凛々しい瞳がジロリと華菜を睨む。ついジロジロ見過ぎてしまっていたようだ。なんだか方言以前に、お嬢様にしては言葉遣いが荒々しい気がすることも、気になってしまう。
「なんだか見た目のイメージと話し方のイメージが全然違って困惑しちゃいまして……」
華菜に指摘されて、目の前の関西弁を話すお嬢様が「ああ、なるほどな」と納得する。
「うち今めっちゃかわええから、喋ったら違和感あるんやろ?」
そう言うと関西弁のお嬢様は、うんうん、と一人で勝手に納得して頷きだした。
見た目のお淑やかさと話し方とのイメージが離れていることに違和感があったのは事実なので、間違ってはいないが、自分でかわいいと言われると反応に困る。ナルシストタイプの子なのだろうか。
華菜がさらに困惑した目で関西弁のお嬢様の方を見ていると、ハッとしたように彼女が身振り手振り大きく弁解し出した。
「あ、待って、ちゃうねん! うちがめっちゃ自意識過剰な子って思って引いてるやろ? ちゃうねん、うち去年までこんな黒髪でもなければ、さらさらストレートヘアーでもなかってん! うち自身が可愛いって訳やなくて、この醸し出してる雰囲気がめっちゃ可愛い的な?」
「昔はそんな風貌じゃなかったってことですか?」
「うち、いろいろあって去年中3のときに大阪からこっちに引っ越してきてから、お淑やかな女の子やらさせられてんねん。それまではめっちゃ茶髪で髪の毛全然手入れしてへんかったからゴワゴワやってんでー」
どうやら見た目が1年間で大きく変わったようだ。去年中3ということは、華菜と同学年みたいなので、敬語からラフな話し方に変える。
「お淑やかな女の子やらさせられてるってどういうことよ?」
「そこはあんまり詳しく話されへんねんけど、イメチェンしたくらいに思っとってもらえたらええわ!」
見た目が口数少なそうなお淑やかな文学少女みたいなお嬢様なのに、ずっと関西弁で元気に話している。見た目はお淑やかそうだけど、元気そうな子だから、やっぱり野球部に興味があって、木の陰から練習をみていたのだろうか。華菜は気になったので聞いてみることにする。
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