第48話 同じ顔の新入部員③
「それでは、今日からよろしくお願いしますわね、キャプテンさん」
怜が突然華菜のことをキャプテンと呼んだ。
「キャプテン?」
「ええ、野球部は華菜さんから始まったことなのですから、華菜さんがキャプテンになるのが相応しいと思いますの。部活動の申請の際にはキャプテンの名前を記入しなければなりませんので」
「1年生なのにキャプテンなんかして良いんですか? なんだか生徒会長に『まだ入学して1ヶ月の1年生がキャプテンの部活動なんて承認できません!』みたいな変な言いがかり付けられたりしないですかね?」
「あら、1年生で生徒会長に就任した人に言われることはないと思いますわよ。まあ、もし何か理不尽に突っぱねられたらこの紙を渡せば大丈夫ですわ」
そう言って怜が保存状態の良い部活動申請用紙を手渡した。
「あれ? 一体どこでこの紙手に入れたんですか? 私が言ったら渡せないって言われたのに」
「ふふ、秘密ですわ? まあわたくしにかかればこのくらい造作もないことですの」
怜のことだから生徒会長を睨みつけて、強引に入手でもしたのだろうか。華菜は首を傾げたが、考えても仕方のないことなので、気にしないことにした。
「とにかく、これで5人揃いましたわ。部の設立要件は満たせてますの!」
華菜がもらった用紙を確認する。後ろから千早ものぞき込んだ。用紙には怜の綺麗な文字が書いてある。
『部員リスト
1(キャプテン) 小峰 華菜 1年2組
2 犬原 千早 1年5組
3 春原 怜 2年1組
4 菱野 真希 1年3組
5 菱野 咲希 1年5組 』
こうやって5つも名前が並んでいるのを見ると、前に進んでいることが実感できる。部室(仮)で待っていてもらうみんなの為にも頑張らないと、という気にもなってくる。
「じゃあ行ってきます」
「華菜ちゃん、ちょっと待って」
生徒会長のところへと向かおうとしたところで千早に呼び止められた。
「どうしたのよ?」
「千早も一緒に行く!」
「あんた生徒会長に怖いイメージあるんじゃないの?」
「千早はあくまでもイメージだけど、華菜ちゃんは実際に、生徒会長に怖い思いさせられたんでしょ?」
「そりゃまあ、そうだけど……」
「だったら千早も一緒に行く! 2人なら怖いのも半減するかもしれないよ」
「別に一人で――」
千早に悪いから一人で行くと言おうとしたときに、昨日の怜との勝負の時に千早にもっと頼って、と怒られたことを思い出す。
「人見知りは大丈夫なの? 多分ドッグ仮面のお面なんてしてたら、それこそ入室した瞬間に追い出されちゃうと思うけど?」
「わからないけど、華菜ちゃんが一緒なら付けていかなくても大丈夫なんじゃないかなって気がしてるんだ?」
「そうなの?」
理論はよくわからないけどそう言うなら千早の言葉に甘えたい。華菜にとっても1人よりも2人のほうが心強い。
「いざとなったら手握ってくれたらたぶん大丈夫!」
華菜が思わず失笑した。生徒会長の前で、2人で手を繋ぎなんかしたら、それこそ怒られそうである。
「じゃあ遠慮なく頼むわ。千早も一緒についてきて!」
「うん!」
かくして、華菜と千早は2人で、生徒会室へと歩き出した。
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