第47話 同じ顔の新入部員②
「あの、春原先輩、そんな無理に入ってもらわなくても……」
咲希はともかく真希は入りたくなさそうだし、無理やり入部させたら可哀そうな気がする。
「華菜さん、そんな悠長なこと言っていられる場合なのですか?」
「え?」
「もう夏の大会の予選申し込み締め切りまでの期日は1ヶ月半ほどしかないですわよ? それまでに部員を9人集めなければなりませんのよ?」
「けど私が由里香さんを野球部に戻したいという夢の為に、野球に興味のない2人を加入させるのは……」
「華菜さんは何か勘違いしてらっしゃいますわ。もう、わたくしが入った時点で野球部設立は華菜さんだけの目標ではないですの。多少強引だろうとメンバーは集めなければなりませんわ」
「それは……」
「だいたいそんなことを言い出しましたら、由里香さんの意向を無視して、無理に誘うほうがひどいお話じゃありませんか?」
そう言われると返す言葉がない。華菜はすっかり黙り込んでしまった。なんだか味方のはずの怜にまでそう言われてしまうと、罪悪感が強くなってしまう。ただでさえ先日生徒会長から由里香と関わらないように、と言われたのに。
「別にわたくしは由里香さんを無理に野球部に入れることを悪いことだとは言いませんわ」
少し時間を置いてから怜が華菜にフォローを入れた。
「え?」
「自分の夢を叶えるために周りの人を無理やり動かした結果、巻き込まれた人たちの人生も好転したというお話はいろいろなところで聞いたことがありますの。華菜さんに声をかけられてからの由里香さんは、物思いに
「そうなんですかね?」
「わたくしは由里香さんではないので、実際どのように考えているかは分かりかねますがね」
怜が微笑んだ。
「とにかく、もう
「菱野さんはそれでいいの?」
特にどちらかを指定せずに聞いてみると咲希が「いいよー」と呑気に返事をする。その横で真希が咲希に言う。
「勝手に返事しないでよ! 私はいいなんて一言も――」
「おねーちゃんのことは私が説得するから、小峰さんは気にせず生徒会長のとこに行ったらいいよー」
と咲希が念押しする。真希が凄く嫌そうな顔をして華菜のことを睨んでいるのでどうすればいいのか悩むが、怜の言う通り、今となっては野球部設立の話は華菜だけの目標ではない。
「じゃあ、お言葉に甘えて菱野さんたちも人数に加えさせてもらうわ」
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