森の中で
私の。心臓の音が聞こえますか?
とどめを刺すのですか?
良いですよ。
私は貴方の声が好きです。
煙のついた匂いも、冬の寒さで傷ついた唇も。
貴方が私に銃口を向ける、その時の眼差しも、愛しているのです。
人の姿をして、里に降りてみると
貴方はいつも孤独なのだと知りました。
貴方はただ1人、その業を背負って生きているのですね。
命を奪い、その命の尊さ故に心を蝕まれながらも、生きようとする貴方は、とても美しかった。
この村に飢饉が訪れる事は知っていました。
村の人の命の為に、次々と、獣を殺していく貴方は、とても苦しそうでした。
でもやはり、それでも貴方は美しかった。
そして、貴方は私に銃口を向けたのです。
貴方はきっと知っていたのですね。
これから飢饉は何度でも訪れる。
その度に支払われる犠牲は、この1度限りではないと。
終止符を打つためには、この森を支配しているものを殺し、森を人間のものにする他ないと、分かっていたのですね。
「すまない…俺は…」
冷たいナイフが心臓の隙間に抉り込む。
いいえ、貴方は悪くない。
でも、賢い貴方なら知っているはず。
龍を殺したものは、龍の呪いにかかり、死んでしまう。
貴方も死んでしまうのですよ。
龍は最後の力を振り絞り
白い体をくねらせて、男の身体を囲うと、男はそれが合図であるかのように、その龍の体に凭れ、静かに息を引き取った。
白い白い雪が山に落ちる。
音もなくただ、白を落としていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます