お墓の前で

「さぁ!今話題のkimiさんです!」

どっと歓声が湧き上がり、舞台は少し揺れた。

やっとだ。やっと。

「はじめまして。kimiです。」

「どうですか?生放送、緊張されてますか?」

「ええ、とても。でもそれよりも、この舞台に立たせて頂いた事の喜びの方が大きいです。」

少し涙目になる私に、司会者が合いの手を入れる。

「ちょっとちょっと、僕まで泣きそうになっちゃいますよ!」

歓声に笑いが混じる。


「この気持ちを今誰に伝えたいですか?」


「この気持ち、ですか?」


ふと、小さい頃の記憶が、エンドロールのように流れる。


「あんたの言い訳なんて聞きたくないのよ。」


お願い、私の話を聞いて。


「はいはい、分かった分かった。」

違うの、分かってないでしょう。


「あんたっていっつも、考えが浅くて不快だわ。もっと賢い言葉を話せないのかしら。」

お母さん、お願い、私の言葉を、聴いて。


蔑みと嘲笑の中で、私は育ったのだ。

ならば、言いたいことはたった一つ。


マイクを強く握りしめた。


「お母さん、あのね。

貴方が無視した言葉は、

貴女が馬鹿にした私は、

こんなに大きくなって戻ってきたよ。」



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