第5話
僕は彼女セレンティアの思考がよくわからない。
何故、出没を午前0時に定めるのかも不明。
兄ユリウスを愛しているとは思えない。
謎だらけの彼女に僕はかつてない興味を覚えた。
退屈だらけの日常が彼女の所為で賑やかになっていくのも確かだ。
彼女に情報を渡すため、協力してくれている令嬢らから文が届いてくる様になった。
王家の影も同様に情報を寄越してくる。僕の執務室という名の雑務室の机に束になっている。時々氷がついているのは彼女が何かしたのだろう。
そういえば最近、騎士団の日課が変わったらしいと聞いた。
なんでも朝、王宮の一番日当たりのよい場所を確保して、凍った人を天日干ししている。
まるで溶けるまでは、何処かのお化け屋敷から出てきた人々の様に、その表情は恐怖に満ちている。
彼女はそれを面白がって、指でつついているのを見かけたことがある。
その上、彼女は王宮のどこでも自由に出入りできる為、たまに父である国王陛下の所に遊びに行って悪戯をしているようだ。
何を考えているのか分からない。
ほら、今日もあの噂の男爵をからかっている。
ご自慢の鬘がずれているというか浮いてるね。彼の頭から浮いている鬘を通りすがりの侍女や官僚たちが恐怖の目で追っている。
男爵の方は、自分が偉くなって相手が恐縮していると勘違いしそうな程、威張っている。
後で注意しないとセレンティアはまた、別の騒動を引き起こしそうだ。
ついこの間だって、落ちてきた植木鉢を彼女は受け止めただけだったんだけど、それを見た宮人達が大騒ぎしだして、一斉に辞職願を出したから、慌てた人事の人間が彼らを留める為に給金の値上げをしようとした。
そこで発覚したのは横領だった。一部の下女や下男たちの給金の支払いが通常の半分になっていることが分かったんだけど、彼女は無意識にやっているのか、故意にやっているのか分からない。
ただ言えるのは、僕の退屈だった日常がたった一人の侯爵令嬢のおかげで色づき始めたことだけだ。
今日もこの情報を彼女に渡さなければならない。
次の#標的__ターゲット__#騎士団長の嫡男レイザック。
彼女はどんな仕置きをするのかな。ちょっと楽しみになってきた今日この頃だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます