第3話
今夜、ターゲットに近づく為、生贄?いや違った。憑依させてくれそうな相手を探している。
《まずはマーキングをしないとね》
マーキングとは、私と相手を目に見えない魔力の糸で心臓を繋ぐのだが、相性があるので誰でもというわけにもいかない。私の魔力は多くて常に垂れ流し状態で、その為に【氷の魔女】と呼ばれていた。
まあ、白に近い銀色の髪と赤い瞳を持っている上、氷の魔法を使うのでそういう呼び名がついた。
《でも、失礼なのよね。私がいくら釣り目でも睨みつけているなんて勝手に言いがかりをつけて、あのアリシアったら、私の横を『きゃー、セレンティア様が私を突き飛ばした~。助けてルイス様~、私セレンティア様に虐められてるの~』ってあんたなんか知らないっていうの。だいたいね。語尾を伸ばす喋り方からして令嬢らしくないし、王子妃教育と学園、家を行き来して、そんな暇ないし、卒業式まであの子の事名前も知らなかったのに、何が虐められてるよ。本当にあったまにきちゃうんだから。ねえ、ラインハルト殿下聞いてます?》
「ああ、聞いているよ。でも、なんで私の執務室でぐ…いや君の話を僕は聞かされているんだい」
私はラインハルト殿下の執務室という名の雑務室に来ている。今は昼間。
私の夜のお勤めもとい夜のお遊びいや違うな。復讐?報復?は午前0時と決めているの。その後はお肌に悪いから寝ているの。だから日中も王宮の中を浮遊しているんだけど、私に気が付いているのは、ラインハルト殿下と近習のアレン君だけ。
ああ、アレン君は私より3才年上で、貧民街の孤児だったのを殿下が拾って近習として、傍に置いているのよ。
アレン君は獣人族でこの国では獣人は野蛮で無知だと勝手に決めつけて、嫌っている。アレン君は普段、人間に化けているんだけど、興奮すると耳と尻尾が出るの。彼は狐の獣人。大きな耳と尻尾に私は癒される。
まあ、触れないんだけどね。残念。
ラインハルト殿下のお母様は神殿の神子だったんだけど、陛下が王妃様がユリウス様を懐妊している時に出来たお子様。つまり浮気して出来た庶子。しかもお母様は殿下が生まれた時に亡くなられて、その後は王宮の誰も来ないような隅の部屋で乳母がひそかに育てた。
殿下は見えない者が見える特異な目を持っているの。【神眼】の持ち主なの。
《わあ、ひどーい。折角、友達になったんだから、遊びにきたのに。そんな態度とるんだ。どう思うアレン君》
「僕にふられても、僕の主はラインハルト様ですので、お答えできません」
《まあ、いいや。ラインハルト殿下。アレン君を借りたいんだけどいいかな》
「どういう意味だい?」
《アレン君にマーキングしたいんだけど》
アレン君の方を見ると真っ赤になっていた。あれ?なんか違う事を考えている?
《アレン君、なんか勘違いしていない?マーキングっていうのは私と契約して、君の心臓と私の心臓を結びつけて、君の体の中に憑依できるようにすることなんだけど……》
そういうと、アレン君は真っ赤になって焦っていた。可愛いなあ。慌てたから耳と尻尾が出てる。ピコピコ動く耳を触ろうと手を伸ばすと
「ひゃーっ、っ冷たい。今触ろうとしましたね」
《えー、触らせてくれないの》
「というか触れないだろう。セレンティア嬢」
《まあそうだけどね。残念だな》
「で、憑依してどうするんだ」
《ターゲットが王宮の外にいるんだよね。最初のターゲットはウイルソン商会のロナルドにしようと思っているんだけど、彼は平民だから王宮に関係ないから自由に出入りできる体が必要なの。だ・か・ら、契約して、体を貸してね》
凄く、嫌そうな顔をしたけれど、結局アレン君は私と契約してくれた。
ふふ、これでいよいよ、彼らに反撃を開始する。さて、どうしようかな?楽しみだ!
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