第30話 炎(えん)

 燃え盛る炎の中....。二人は対峙していた。


「お嬢ちゃん、二人っきりになっちまったな。早く逃げねえと丸焦げになっちまうぞ?」


「逃げるつもり?せっかくこうして出会えたのに」


「お嬢ちゃん、俺をだれかと勘違いしてねえか? 残念だがここの領主はとっくに外だ。俺は部屋でおとなしく待ってる二人の連れの安否を確認しに来ただけだ」


「いいえ、私は誰とも間違えていないわ。クリスさん。いいえ、パパと呼んだほうがいいかしら?」


「は? お前何を言って....」


その言葉をクリスが言い終わるよりも速く、少女はすごい速さで襲い掛かってきた。


 その少女が持っていた武器はレイピアで、クリスの懐にうまく潜り込み、刺突をくらわそうとしていた。クリスは咄嗟の判断で後退するが、炎に囲まれているため交代する距離には限界があった。


「俺には娘なんていた覚えないんだが?」


「とぼけないで! 母はあなたに捨てられ、それを嘆きながら死んだの。覚えがないなんて、そんなはずないじゃない! それともなに? あなたにはその辺にいる遊び相手の一人だったっていうの? そんなの絶対に許さない!」


 少女はさらに力を込めて攻撃を加えてくる。クリスも必死に受けながら避けるが、避けた際に背中を火傷してしまった。


「ぐっ」


「ここは炎の中よ? 避けてるだけじゃなくて攻撃したらどうなの?」


「できるわけないだろ? もしかしたら俺の娘かもしれん。それでなくても俺は女は斬らない」


「とんだ騎士道ね。そんなことであなたは命を落とすのよ。バカみたい! これで終わりよ!」


 そう言うと、少女の体がみるみる炎に包まれ、人型の炎の塊となった。


「これが私のユニークスキル《炎爾えんじ》よ。私がこの館を燃やしたの。私が給仕係として出入りしていたのを誰も気がつかなかったみたいね。バカみたい」


「ユニークスキルがポンポン出てきすぎだろ」


「なんのこと? まあ、いいわ。ここで死になさい」


少女は両方の手のひらをクリスに向け叫んだ


バーンアウト燃え尽きろ


手のひらから炎が放たれクリスを包み込んだ....

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