パリンッ

　何かが割れる音でレオは目が覚めた。恐る恐る薄目を開けて窓の方を見ると黒い人影が割れた窓の前に立っていた。声が出そうになるのを必死に押し殺して寝たふりをした。すると、

「おかしいな。ここには普段人はいないはずなんだけど」

　とその人影の主が言った。そしてこちらの方を恐る恐る確認するように覗き込む。

「ん？コイツは....なるほどそう言うことね。どうやら眠りが深いみたいだ。助かった。バレずにすみそう」

　そう言うと静かに部屋を出ようと扉の方へと向かっていく。こちらに背を向けて油断している。今だ！

　レオはその人影に後ろから襲いかかった。

「うわっ何すんだコイツ！」

　その人影はレオを振り払おうと必死になっていたがレオはずっと手首を握りしめていたのでなかなかふりほどけない。その人影は体勢を変えようとこちらを振り向く。顔が見えるかと思ったが黒い布で口周りを覆っていて黒い帽子もかぶっていたのでその黒く澄んだ目をしているということしかわからなかった。急に体勢を変えたので二人の足が絡まってレオが押し倒す形になって倒れ込んでしまった。

　ムニッ

　レオの手が何か柔らかいものに当たる。

「キャッ」

　その人影はすごく驚いたようでレオの顔を蹴り飛ばし割れた窓から飛び出して行ってしまった。レオはというとその場に伸びてしまっていた。

「レオ！　おいレオ！　しっかりしろよ」

　カイの大きな声で目を覚ます。あたりはすっかり明るくなっている。

「レオが目を覚ましたぞクリス！」

「本当かカイ！」

　クリスも部屋に入ってきた。続いてルーインも入ってくる。

「一体何があったんだレオ。窓は破られてるしお前はここで伸びてるしで訳がわからないよ」

「ごめんカイ。水が飲みたい」

「水を頼むルーイン」

「すぐ持って来させよう」

　すぐに召使いがコップ一杯の水を持ってくる。その水を飲み干すまで周りにいる人達はレオのことを見つめていた。

「ふう、ようやく落ち着いた。まだ頭を打ったところが痛いけどね」

「レオ、何があったんだ？」

　レオは窓から入ってきた人影のことをみんなに説明した。ルーインはこの館の警戒を強めるため警備隊のところへ行くと言って出て行った。クリスとカイは一緒に広い部屋で寝るようにしようと提案してくれた。3人だけで話したいこともあったのでレオもこの提案に乗って大部屋に行くことにした。荷物をあらかた移すと3人きりになったことを確認してレオは自分が考えたことについて話し始めた。