　レオ達は迷いながらも通行人に道を聞いて領主の館までたどり着いた。着いたときにはすっかり暗くなっていた。

　館の前では「心配」という文字が読み取れそうな顔をしたクリスが待っていた。

「お前ら心配したぞ！　いったいどこほっつき歩いていたんだ」

「ごめんよクリス。ちょっと気になることがあってこんなに遅くなっちゃった」

「後で聞かせろよ？　こんなに心配させたんだからよ」

　とクリスは少し冗談っぽく言ってみせた。レオはクリスに話すべきか迷っていた。もしかしたらここにいる人の中に恨みを買うようなことをした人がいるかもしれない。あまり言いふらして混乱させてもいけないと思っていた。しかし、レオはクリスがそんなことをするような人ではないと信じていたのでクリスには話そうと決めた。

「わかったよ」

　こうして三人は館の中へと入っていった。

　中に入るとおもっていたよりも素晴らしい内装にレオとカイは驚きを隠せなかった。外から見た館もそれは素晴らしいものだったが、中は美しい装飾が施されていて豪華に仕上げられていた。入って目の前には大きな階段があり二階に続いているようだった。階段には赤いじゅうたんが敷かれていて手すりのところには天使の像がそれぞれ立っていた。床は大理石でできていて左右にそれぞれ大きくて重そうな扉があった。この扉の取っ手は金色に輝いていた。

「待っていたよ二人とも」

　ルーインが二階からその豪華な階段を下りてきながらそう言った。

「ごめんなさい。遅くなりました」

「いいんだよ。僕なんかよりもクリスが心配そうにしていて、あんなクリスの姿はなかなか見れないからとても貴重なものを見れたよ」

「からかうなよ！」

　クリスが恥ずかしそうに怒った。それを見てルーインはくすくすと笑いだした。笑いすぎて目には涙が浮かんでいる。

「とクリスをからかうのはこの辺にして、夕食にしよう。お腹すいてるだろ？　もう用意してある。ついてきて」

　そういうとルーインは左の扉のほうへと歩いていくので三人もついていった。扉の奥には長い廊下があっていくつか部屋があるようだったが廊下の一番奥にある部屋へと入る。そこにはこれまた豪華な装飾が施された部屋で、長いテーブルが置かれていてテーブルクロスがかけられている。ドアがノックされる音がして、召使であろう人たちが恭しく入ってきて、料理を並べていく。その光景を三人はぼーっと見ていたが、ルーインが席をつくように促したのでそこでようやく我に返った。

「テーブルマナーなど気にされているかもしれないが、そういうのは今日はなしでいいよ。私もどちらかというと楽しく食事がしたいほうだからね。もちろんそういう場でマナーを守ることをないがしろにしているわけではないし、大切なことだとは思うがね」

「すまんなルーイン。そういうのはこいつらには教えてねーんだ。俺も苦手だからな」

「そうだろうと思ったよ。今夜はパーッといこう」

　こうして召使たちを下がらせ４人だけになると各々好きなように食事をとり始めた。食事があらかた終わると召使たちがお皿を下げ、この町の地酒を持ってきた。ルーインとクリスは懐かしい思い出をお酒を酌み交わしながら話しているようだった。レオとカイは歩き回って疲れていたので先に休むことにした。ルーインとクリスに早めに休むことを伝え召使たちに連れられて玄関から見て右側のほうの扉の奥にある客間へと通された。そこで二人は隣どうしの部屋を借りて休むことになった。廊下で別れを告げて自分の部屋へはいるとレオはすぐにベッドに倒れこんで寝てしまった。いくつかの人影がこの館日数いているとも知らずに......