第13話 クリスの話

「クリスさん! カイ! ただいま!」


「おお! 戻ったかレオ。俺にさん付けはいらん。ムズムズする」


クリスは体をくねらせていた。


「そ、そっか。わかったよクリス」


「よし!」


 クリスが何かを抱えてこちらに近づいてきた。


「ん?クリス、何抱えてるの?」


「おお、これか?」


 クリスが抱えていたものを持ち替えた。それは....


目を回したカイだった。


「カ、カイ? どうしたの?」


「こいつがなぁ、俺があんまり話しかけたり構ったりするもんだから嫌がってな。訓練にもなると思って俺に勝ったらお前に構うのをやめてやるって言ってやったのよ。そしたらやる気になったみたいで向かってきたのはいいんだがこのザマだ。力はあるのに使い方がなっちゃいないな」


「それは大変だったねカイ」


 レオは近々自分も同じ運命を辿るのだろうと思い、カイに同情した。


「ところでレオ。お前に聞きたいことがある。あの腕についてだ」


「うん」


「アレは一体なんだ?まさかお前、魔物か何かなのか? それとも呪いの類か?」


「僕にも良くわかってないんだ。ただ、アレが出る時は決まって頭の中で"ユニークスキル発動"って言う声がするんだ」


「ユニークスキルだと? 世界でも限られたやつにしか発言しないあの力か」


「僕もそれを知ったのは最近なんだ。父さん達を襲ったオークを倒したのもこの力だよ。僕は気を失っていたんだけどカイが見ていたんだ」


「そうだったのか」


クリスはそこから少し考えて思い出したように


「そういえば、ユニークスキルは今の騎士団長も使えるらしいな」


「そう! それなんだよクリス。僕も村で村長に聞いたんだ。騎士団長に会えればもしかしたらこの力のことがわかるかもしれない」


「待て待てレオ。お前の力は魔物の力だと思われても仕方ないものだぞ? 騎士になんか見せたら拘束か最悪殺されかねない。それにあまり他言はしないほうがいい。今回目撃したのは俺たちと警備隊、それに盗賊団だ。村人や子ども達は自分達を守るのに必死で見ていない。警備隊には俺が口止めしておいたが、村長には報告させた。流石に俺が倒したとはいえなかったからな」


「そうだったんだ。気をつけるよ。でもどうしても何かこの力について知りたいんだ。そうすれば僕はもっと強くなれるはずなんだ」


「いいかレオ。一つ言っておくぞ?力に飲まれるな。力ってのは人を狂わせる。どうしても人間ていうのは弱い生き物だ。力に飲まれちまったらまともな判断なんてできない。俺はそういう奴を何人も見てきた。決まってそいつらはいい死に方をしない」


「そっか気をつけるよ」


「そうだな。まあ、でも自分のことを知るのは悪くない。力もコントロールできるかもしれない。情報収集だけでもしに行ってみるか」


「本当?ありがとう。騎士団の人たちにもクリスから聞いてみてよ」


「あー、そのことなんだがな」


クリスは苦い顔をしながら


「俺、あんまり今の騎士団知らねーんだよな笑」


「え?そうなの?」


「ああ、俺がいたのは前の騎士団長の時だ。その人も歳でな。その人に拾われて俺は騎士になれたんだ。次になったのが俺より全然若い奴だってのは聞いたけどな。そいつがユニークスキル持ちだ」


「そうだったんだ。じゃあ、情報収集は少し難しそうだね」


「まあ、昔のツテをあたってみるさ。そうと決まれば少し稽古してから王都に向かおう。お前ら弱いからな笑」


「う、うん」


 そこから1週間、地獄のようなトレーニング生活が始まった。

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