第14話 修行

 いよいよ今日は王都へと旅立つ日だ。レオはこの王都へと旅立つ前の1週間のことを思い出していた。


 クリスはもうそれは厳しく指導してくれちゃった。


 トレーニングの内容を少し言うと、村とクリスの家の往復約5キロを毎日5本走る。(最後の3日間は買い出しまで頼まれた)重りで負荷をかけた筋力トレーニング(重りが最後には大きな岩になっていた) 組手(重り付き)そして1日の最後にクリスからの戦術や立ち回りについて実践的なトレーニング。とこんな毎日を過ごしていた。


「いいかお前ら。ふらついてる場合じゃないぞ! このトレーニングには意味があるんだ。俺が考える戦い方ってのはな、とにかく相手を見ることから始まるんだ。相手の動きをよく観察してその動きに合わせる。すると相手と同じリズムで戦うことになる。そこから少しリズムをずらしてやるんだ。するとリズムがずれて相手は違和感を覚える。そこが相手の隙だ。そこをつく! もしくは隙を広げる。ただその隙を作るのにも経験がいる。経験を増やすためには攻撃をすると言うよりも攻撃を受け続けることが大切だ。そのためにはまず基礎体力と疲れない筋肉が必要ってわけだ」


「なるほど、そう言う理由があるのか」


 レオは納得しつつもなかなか体がついていけていなかった。しかし意味のあることだとわかるとやる気はだいぶ変わってくる。日を追うごとに、少しずつできることが増えてくるようになっていた。


 そして、なんといってもここで成長を遂げたのはカイだった。カイは理屈はよくわかっていなかったようだが、体を動かすことに関しては飛び抜けて鋭い感覚を備えていた。クリスがやってみせるとすぐにそれを自分でもやってみることができた。体の使い方力のかけ方がわかってきたようで前よりも俊敏かつ力強く動くことができていた。ただ、剣の扱いはあまり得意ではないようで、トレーニングの中で自分の爪を出し入れする術を覚えそれがとても有効な武器となっていた。


「すごいよカイ! この短期間でものすごく強くなってるよ」


「そうか? やっぱり俺って天才?」


「それは俺に勝ってから言うセリフだな笑」


 とクリスが少し小馬鹿にしたようにカイに言った。


「くっそー、今に見とけよ?」


「まあまあ、クリスのおかげで僕たち少しずつ強くなってきてるんだから」


 最初の頃よりカイもクリスに慣れてきたようで少しずつ会話も増えてきた。クリスが実力で示したのが大きかったのかもしれない。クリスにコテンパンにされた後はあまり反抗的にはならなくなった。


 そんなこんなで1週間と言う短い時間の中で戦いのたの字も知らなかった2人がなんとか盗賊くらいには戦えるまでに成長した。このトレーニングの中でもレオは自分の力を引き出そうとしてみたがやはりうんともすんとも言わなかった。何か条件みたいなものがあるのかもしれない。レオは、そう考えていた。だが、やはり答えは見つからない。

 

 王都に行かなければ!


 そして、今日旅立つ


 期待と少しの不安を抱えて....

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