第11話 カイの思い
クリスは信じ難い光景を目の当たりにした。今まで連れていた知り合いの子どもの腕が巨大化したかと思うと、向かってくるオーガ目掛けてその拳を一閃。オーガは吹っ飛び気絶している。誰もがその光景に呆気を取られている。
クリスはハッと我に帰り周りにいた警備隊に、
「動かないうちにあのオーガを捕らえろ!」
と叫んだ。警備隊も我に帰り、落ちていた手錠でオーガの腕を拘束する。盗賊団が襲ってくるかと思ったが、彼らにとっての最後の切り札だったらしく、戦意を喪失し呆然と立ち尽くしていた。盗賊団の団長も観念したらしく、
「まさか、そんな....」
とぶつぶつ言っていた。
カイはと言うと、レオをおぶって荷車に乗せていた。というのも、レオは力を使った後すぐに倒れ込んでしまったのだ。相当消耗する力なのだろう。カイはレオに申し訳なくなっていた。
おれは、レオを疑ってしまった。危険を顧みずに守ってくれたレオを.... 人間を信じられなくなっていたとはいえ、レオまで疑ってかかることはなかった。今も人間への不信感は晴れないけど....
「カイ?」
レオが目を覚ました。
「無事だったんだね。よかった」
「お前の方が無事じゃねぇじゃねぇか」
「あはは、それもそうだね。これじゃ格好つかないや」
「まったく、無茶しやがって」
カイは目に涙を浮かべていた。
「うわわ、カイどうしたんだよ」
「いや、わりい。俺ここまで攫われてる時に人間はなんて酷いことをするんだと思って、お前までこのさらってる奴らのグルなんだと思って疑っちまったんだ」
「そう思うのは仕方ないよ。僕もカイの立場ならそうだったかもしれない」
「俺は人間は信じられなくなったかもしれない。でもお前は自分も危険だったのに俺と子ども達を守ってくれた。だからレオだけは信じられる」
「そうか、そうだよね。信じられなくなっちゃうよね。でも、いつか他の人も信じられるようになって欲しいな」
「そうだな」
カイは少し無理に笑っていたが、いつかちゃんとカイが人間と笑い合えるようにしたいとレオは心に決めた。
「話は終わったか?」
後ろからクリスが話しかけてきた。
「そろそろ村に戻ろう。子ども達も疲弊してるしな。早く親に合わせてやろう」
「おっさんも来てくれてありがとな」
カイがぶっきらぼうにお礼を言う。
「ああ、いつか俺のことも信頼してくれよな」
「聞いてやがったのかよ! これだから人間は」
「はっはっはっは」
クリスは大きな声で笑いながら子ども達のところへ荷車に乗るよう伝えに行った。
「クリスさんは本当にいい人だと思うよ。これからビシビシ鍛えてもらうからね」
「あのおっさんのこれからの行動次第だな」
カイはなんだかクリスのことは少しだけ信頼しているように見えてレオは嬉しくなっていた。
「何笑ってんだよ」
「なんでもないよ」
「よし!村へ出発だ!」
というクリスの大きな声とともに一行は村へとゆっくり向かい始めた。
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