第10話 再び

「カイ! 大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。あそこで戦ってんのは誰だ?」


 クリスが村人に振り下ろされた盗賊団のお頭の剣を受けていた。


「あれはクリスさんだよ。父さんの木を買ってくれていた人。昔、警備隊長やってたんだ。僕たちに稽古つけてくれるってさ」


「ああ、それを頼みにいくって言ってたもんな。でも、盗賊団はまだいるぞ?大丈夫なのか?」


「大丈夫。ほら」


 次の瞬間、村の警備隊の人たちが馬に乗ってきた。


「クリスさん!加勢します!」


「おう!任せた!」


 警備隊員は5人。対する盗賊団員は8人と少し人数で劣っているが、なんとか対応している。5人でお互いに背中を守りながら戦っているところを見ると、なかなか統率が取れていてよく訓練されていることがわかる。


 一方クリスはというと、盗賊団長を圧倒していた。団長の剣を受けているだけに見えるが、うまくいなして体力を温存しながら戦っている。団長はうまくいなされて疲れが見えてきている。


「くそ!なんなんだお前!」


「通りすがりの家具職人だが?それがどうかしたか?」


「そんなやつがこんなに強いわけねぇだろ!」


「今度俺の作った家具を見せてやるよ。お前が生きてたらな!」


 その言葉を放つと同時に剣が宙を舞って地面に突き刺さる。


「くそっ!」


「大人しく投降するなら王国の騎士団に引き渡すくらいで勘弁してやるよ」


「そんなの一生牢獄暮らしじゃねぇか。おい!おめぇら!あいつを起こせ!」


「へい!」


「あいつ?」


「へへっ今に見てやがれ。お前なんか一発でおしめぇよ」


「うおおおおおおおおおおおお!!」


 洞窟からものすごい声が聞こえてきた。思わず全員耳を塞ぐ。


「何が来るって言うんだ」


 洞窟から出てきたもの....


 それは、オーガだった。


 身長は3メートル以上にもなるだろうか。腕と首には枷がはめられている。盗賊団員が腕の枷を外す。首の枷は犬の首輪のようにどこかに鎖で繋がれているようだ。


「うおおおおおおおおおおおお!!」


 またあの声だ。


「うるせぇぞ!」


 そう言って団長が腕に剣を刺す。するとオーガは大人しくなった。どうやら相当調教されているらしい。


「このオーガはこいつがガキの頃から調教してきたんでな。俺の言うことは聞くんだ。さあ、こいつを倒せるか? 家具職人」


「騎士団の頃に何体も狩ってきたわ! こんなの容易い!」


 そう言ってクリスはオーガに向かっていく。しかしオーガの腕の一振りで飛ばされてしまう。なんとか剣で受けたが相当腕が痺れているようだ。


「こいつは並の鍛え方をしてねぇ。そこらへんのオーガと一緒にしてもらっちゃあ困るぜ」


「クリスさん!」


 1人の警備隊員が駆け寄る。


「俺たちもこのオーガに勝てなかったんです」


「そうだったのか。しかし、ここで負けるわけには行かねぇだろ」


 そう言ってクリスはまた向かっていく。今度はうまく避け、ひと突きオーガに入れる。すると、オーガは怒り狂い、ところ構わず暴れ回る。


「くそ! 手がつけられん」


「うおおおおおおおおおおおお!!」


 また雄叫びをあげて今度はレオやカイや子ども達の方に向かっていく。


「くそ! そっちへいくな! レオ、にげろーーー」


 クリスの叫びも虚しくオーガは一直線でそちらへ向かっていく。


「こっちへきたぞレオ、逃げよう!」


「でも、子ども達が....」


 子ども達は恐怖で足がすくんでいる。


 くそ! どうすればいいんだ。僕には力がない。でも守りたい! カイも子ども達も! 逃げるな!

僕が守るんだぁああ!


 その思いに呼応して、心臓のあたりが熱くなる。



《ユニークスキル"混喰こんじき"発動!》



 次の瞬間レオの左腕が巨大化した。ただの巨大化ではなくオークの腕に変化している。だが、その瞬間にもオーガが向かってきている。レオは無我夢中でその左腕を、オーガの顔面に向かって思いっきり突き出す。



豚頭人怒衝動オーク・レイジ・バースト



「うあああああああ!」



 ズドォオオン!



 レオの左腕が見事にオーガの顔面にヒットし、そこから衝撃波が走る。





 オーガは....





 地面に叩きつけられた。

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