第9話 救出

 2人は奴らのアジトまで馬を走らせる。この馬ならアジトまで30分もかからないだろうとクリスは言っていたが、受け渡しの時間まで間に合うかはわからない。レオは全速力で走る馬から振り落とされまいと必死にクリスにしがみつきながらカイの無事を祈った。




 その頃カイは....




 絶望していた。




 手と足はロープで縛られて、目隠しをされ、荷台に積まれている。匂いで村の人たちが自分にこんなことをしていることがわかる。あんなに優しくしてくれていたのは俺を捕まえるためだったのか。もしかしたら売られてしまうかもしれない。人間は信用してはいけなかった。もしかしたらレオも村の人たちとグルだったのかもしれない。まだ会ってそんなに時間もたっていないし、お金だっていつ無くなるかもわからない。これからの生活の資金にされてしまったかもしれない。悪い方向にばかり考えが進んでしまっていた。


 家族は殺され、人間に騙され、散々な人生だ。自分の運命を呪っていると、


「ついたぞ」


 どうやら目的地に着いたようだ。しばらくすると村人とは別の匂いの人間が近づいてきた。


「おお!これが獣人か。こいつはオークションで高く売れそうだな」


「そ、そうなんですよ。お気に召しましたか?」


「これは素晴らしい。よくやった」


「それで....子どもたちは?」


 どうやら子ども達が人質に取られていたようだ。それで自分と交換されるのか。


「ああ、そうだったな」


「お願いします。返してください」


「わかったわかった。ちょっと待ってろ」


 奥の方から子ども達の泣き声がきこえてくる。反響して聞こえるのでおそらく洞窟から出てくるのだろう。


 どこからか男たちの声が聞こえる。


「お頭のあれが始まるな」

「あれか、上げて落とすやつだろ?」


 その男たちから嘲笑が聞こえる。


「お前たち!無事だったか?他の子たちもいるな。よかったよかった」


 村人の安堵の声が聞こえる。


「さあ、帰ろう」


「ちょっと待て」


「な、なんです?」


「こいつらなぁ、腹が減ったって言って泣き喚いてたんで、俺らの飯をあげちまったんだよなぁ。結構な量食っちまったわけよ。それでこいつらの飯代って事でこの獣人は貰うわ」


「なんで!? 返してくれるって言ってたじゃないですか。あんまりですよ!」


「うるせぇ!黙って従え!従えないのならこのガキどもは殺すしかねぇな!」


「やめてくれ!やるなら俺をやってくれ」


「そうかそうか。お前が殺されたいか!」


 剣を振る音がふたつ聞こえた....


 ん?ふたつ?


「助けに来たよ」


 その声がした後に手足の縄と目隠しが外された。


「レ、レオ」


 レオが来てくれたんだ。

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