第8話 村の真実
村に着くと2人は馬をつなぎ、レオたちが部屋を使わせてもらっている宿屋に向かった。クリスに気がついたのか村人たちがざわついているのがわかる。
「クリスさん久しぶりですね。何の用でこの村に?」
「すまんが、急いでるから後にしてくれ」
そういうと宿屋に入っていく。
「おーい、主人はいるか?」
「はいはいなんでしょうか」
宿屋の主人はクリスを見つけると、とても驚いた様子で一瞬固まってしまった。
「ク、クリスさんじゃないですか。お久しぶりです。どうされたんですか?」
「このレオの連れをしらねぇか?獣人のぼうず。ここに泊めてるだろ?今朝からいないみてぇなんだ」
「さ、さあ?私は知りません」
明らかに目が泳いでいる。嘘をつけないタイプのようだ。
「本当か?あやしいぞ?何か隠してるんじゃねぇか?」
クリスがさらに問い詰めようとした時、
「やめなさい」
宿屋に老人が1人入ってきた。
「村長。久しぶりだな」
クリスはその老人を村長と呼んだ。この村の村長のようだ。
「宿屋の主人を問い詰めるのはやめてくれ。真実を話す。場所を変えよう」
そういうと村長の家に招かれた。テーブルに着くと、温かいミルクがそれぞれに出されて村長が話し始めた。
「この村は今、盗賊団に占領されておる。クリス、ちょうどお前がこの村から出て一ヶ月ほどした頃だ」
「何だって?村には俺が鍛えた警備隊もいるだろ?あいつらを鍛え終わったから俺のしたいことをしたくてこの村を出たんだ。俺に頼りすぎるのも良くないと思ったし、あいつらも半端な鍛え方をしたつもりはないぞ?」
「だが奴らは警備隊よりも強かった。そうでなければ子ども達を人質に取られることもなかったんだからな」
「道理で子ども達の姿が見えねぇわけだ」
確かにレオたちがきた時も子ども達の姿はなかった。
「盗賊たちは子ども達の命を保証する代わりに一定の額を収めるように要求してきた。子ども達と交換できるような高価なものを奴らに渡せば子ども達を返す、他のものに助けを乞えば子ども達の命もないと言われたのだ」
「まさか、それで獣人のぼうずを渡したっていうのか?」
「今、村のものが獣人を奴等のアジトに連れて行っている。だから頼む。下手なことはしないでくれ。すまないが、私たちには獣人よりも子ども達の命の方が大事だったのだ」
しばらくの沈黙の後クリスが口を開いた。
「そんな奴らが素直に子ども達を返してくれるとも思えないがな」
「そ、それは....」
「子ども達が大切なのはわかる。村の宝だ。だからって村に来てくれた人を犠牲にしていいとは思わん。俺は助けに行くぞ。子ども達も獣人のぼうずも」
「僕も行くよ」
今まで黙って聞いていたレオが口を開いた。
「村の人のことは今は許せない。僕たちだって大変な思いをしてここまできた。これから頑張っていこうと2人で約束したんだ。大事な人を奪われる気持ちはよくわかる。だから盗賊団はもっと許せない」
「だけど、危険だぞ?まだお前だって子どもだ」
「ここでカイのところに行かなかったら、助けられなかったら僕は絶対後悔する。もう間に合わなかったあんな悔しい思いをしたくないんだ!」
「わかったそこまでいうなら連れていく。村長、絶対助けてくる。俺の命に賭けて」
「本当にすまないことをした。頼む、助けてきてくれ。奴らのアジトは村から南の方にまっすぐ行った洞窟の中だ」
「わかった。あそこは確かに広くて、アジトにするにはもってこいだな。レオ急ごう」
「うん」
2人は馬でアジトへ急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます