第7話 異変
カイがいない。どういうことだ?夜中この部屋を見た時には確かにこのベッドで寝ていた。荷物も置いたままだ。よく見ると枕元に書き置きがある。こう書いてあった。
用事を思い出した。
少し出てくる。
用事とは一体なんだろう。不思議に思いながらもすぐに帰ってくるだろうと思い、帰ってきたらここにくるようにという書き置きと地図を置いて出かけることにした。
父が木を売っていた人のところへ向かう。その人は、一年ほど前まではこの村で警備隊長をしていたが、今は村から少し離れた所に家を建てて生活しているらしい。と、父の部屋で見つけた手紙に書いてあった。なんでも、昔は王国の騎士だったようで名前をクリスといった。
「ここかな?」
それらしい家を見つけた。柵が周りを囲んでいてその中で馬が放し飼いにされている。
コンコンコン
「すみませーん。クリスさんいますか?」
「はいよー」
奥から声がして大きな男が出てきた。髪は短く、茶色で同じ色のあご髭を蓄えていた。とてもがっちりした体格だ。顔や腕にはいくつもの傷がある。
「おうぼうず。こんなところまでどうした」
「僕、レオって言います。父さんの木を買ってくれていたクリスさんですよね?」
「ん?ああ!お前レオか?大きくなったな!しばらく来てなかったからわからなかった。父ちゃん元気か?」
「実は....」
レオは今までのことを全て話した。もちろんカイのことも。クリスは黙ってそれを聞いてくれた。
「そうか、辛かったな」
クリスは心配そうにこちらを見ている。
「はい。だからどうしてもそのオークを倒したいんです」
「復讐か?馬鹿なことを言うな!オーク相手に子供だけで。死に急ぐようなもんだぞ」
「そうなんです。だからクリスさんに鍛えて欲しくてここまできました。王国の騎士だったんでしょ?」
「昔の話さ。警備隊長もやめちまって剣もしばらく握ってねぇ。お前の父ちゃんから買った木で家具とかいろんなもん作って過ごしていたからな」
よく見ると部屋の中には気で作られたさまざまな作品が所狭しと置かれていた。どれも素晴らしい。手先が器用なのだろう。
「どうしても教えて欲しいんです。倒すために。死なないために」
「死なないためか」
そういうとクリスは少し考え込む。そして、
「わかった。教えてやる。お前の親父さんには世話になったしな。無駄死にさせるわけにはいかねぇ」
「本当!?ありがとうクリスさん」
「そうと決まればカイも呼んでこい」
「それなんだけど今朝からいなくなっちゃって。なんでも用事があるとかで。一応戻ったらここにくるように書き置きを置いてきたんだけど」
「妙だな。急すぎる」
「確かに急だったと思うけど」
「村で何か変わったことはなかったか?」
「変わったことはなかったと思うけど....。あ、でもすごく歓迎されたよ。宿を用意してもらったり、食べ物をご馳走してもらったり。前に父さんと来た時はそんな感じじゃなかったと思う」
「俺がいた時はそんなことしてなかったぞ」
「やっぱりそうなの?」
「ああ、とにかく村へ行ってみよう。カイがいたら問題なし。何かおかしければ突き止めなきゃな」
そう言うと2人は支度を整えた。念のためにとレオは短剣を渡された。外にいた馬に2人でまたがり、村へ向かった。
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