第9話 動物の感情

ある日の事。



「郁海」



背後から名前を呼ばれ振り返る私。



「あれ?毬恵、どうしたの?何処か寄るって言ってなかった?」


「うん、寄ったんだけどパッとするのがなくて」

「そっか」




私達は色々話をして帰る。




その途中 ――――



ドカッ

背後から誰かが私の頭を叩いた。




「ったー」

「よー、馬鹿、郁海ーー」

「なっ…!りゅ、劉騎ぃっ!人の頭を…っ…!」


「郁海…大丈夫?」と、毬恵


「う、うん……全くっ!馬鹿になったらどうすんの!?責任取って貰えるわけ!?」


「責任?どんな責任だよ!馬鹿、郁海!お前と結婚か?」


「えっ!?け、結婚っ!?」

「責任って、そう言う事だろう?」

「いやいや……結婚なんてしたら即離婚だから!」




そこへ ――――



「劉騎っ!お前、いきなり走り出すなよ!」


「あっ!悪い、悪い。前にこの馬鹿女が帰っているの見えたから意地悪してやろうと思って走り出した」


「お前なぁ~。あっ!久しぶり、二人共」


と、雄。



「久しぶり~」




私達4人は話をしながら帰った。





そしてまた、ある日の学校帰りの事 ――――



「あの…俺…あなたの事が好きです!俺と付き合って下さい!」




それは、他高生からの突然の告白。


彼は、カッコ良くて、私みたいな女の子を相手なんて、つり合わなさ過ぎる。


それなのにどうして?


疑問に思った瞬間だった。





「友達からゆっくりで良いから」

「…えっ!?…でも…私より…」


「君で良いから告白してるんだ。選んだのは俺自身の気持ち。勿論、君にも選ぶ権利はあるけど…」



私は、ゆっくりと付き合う事にした。


だけど、彼の魅力にどんどん惹かれ気持ちが変わり正式に付き合う事になった。



でも ―――



「ねぇ他に彼女いるって本当?」

「えっ!?…や、やだなぁ~、そんな訳ないじゃん!」


「へぇー…でも口では簡単だよね?これが証拠だよ!これでも他に彼女いないって言える?」




携帯の写真を見せる。




「これは、俺のお姉さん」

「へぇー…じゃあ、これは?」

「俺の妹」


「お姉さんと妹…姉妹いないって話しじゃん!あなたと同じ学校に通っている女の子から聞いたんだー。もう言い逃れ出来ないからっ!」



「………………」



「あなたとは、これ以上付き合えないっ!さようならっ!」



私達は別れ、私は家の近くの公園にいた。




そこへ ――――



「にゃあ~」

「……猫……」



私の足元をスリスリする猫。




「この猫……セナ……?」

「にゃあ~ん」




その時だ。



「セナーー、セナーー」と、劉騎。



私はすぐに分かった。



「あっ!ご主人が探しに来たよ。ご主人の所に戻りなよ」


「にゃあ~」


「セナ?行かないの?」




セナは、私の顔をじーっと見つめる。




「セナ?」



私はセナを抱きかかえる。



「あっ!馬鹿、郁海っ!セナ返せよ!」

「言われなくても返します!」



しかし爪をたて、離れようとしない。



「えっ?セナ?」

「おいっ!セナ?」



「………………」



顔を見合わせる私達。




次の瞬間 ――――




ふわりと劉騎に不意に抱きしめられた。



ドキン……



≪うわっ!つーか不意にするのは反則でしょう?≫




「何かあったのか?」




ドキッ



「えっ?」

「泣いた後っぽいし……それに……まだ制服って事は、まだ家に帰ってない感じ?荷物もあるし」



そんな中、セナは喉をゴロゴロ鳴らす。



「セナ、レンタルしてやるよ。特別に」




そう言うと劉騎は抱きしめた体を離す。




「じゃあな!セナ。今日は、その女の子の傍にいてやって!」


「にゃあ~ん」



劉騎は背を向け、話を続ける。




「動物って結構、人間の気持ちとか気分察知するからさ。お前なら安心して任せられる。それに、お腹すいたら帰って来るだろうし。お互いに部屋の窓開けてれば勝手に帰るから。じゃあな郁海」



劉騎は帰って行った。




「…劉騎……ありがとう……」



私は劉騎に直接言えなかったけど、セナを抱きしめ、お礼を言った。



次の日、目を覚ました時には既にセナの姿はなかった。



「セナ……ありがとう…」















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