第8話劉騎の優しさ
そして、ある日の日曜日。
用事で街に出掛けた帰り、私は遠回りをして帰る事にした。
例の屋敷に通り掛かった次の瞬間 ―――
ドカッ カラン
サッカーボールが私の手に当たり、そのボールと共に私の携帯が屋敷の敷地内に入ってしまった!
「あーーっ!携帯がーーっ!」
「ヤッベー、ボール中じゃん!ここの鉄柵高いんだよなぁ~」
子供と目が合う私。
子供はじーっと私を見つめる。
「な、何?」
「お姉さん、背、あるし」
「えっ!?私が中に入れって?」
「だって、携帯、俺のボールが当たって入っちゃったんでしょう?」
「そうだけど……」
「お願いっ!お姉ちゃんっ!あのサッカーボール、パパから誕生日プレゼントで買って貰った大切なボールなんだ!無理に頼んで買って貰ったやつで……」
「……そっか……お姉ちゃんスカートだし男の子でもないし女の子だから敷地内に入る迄時間かかるけど時間大丈夫?」
「うんっ!」
「分かった…じゃあ、私、頑張って取って来るから待ってて」
私は何とか中に入る。
「はい!ボール」
「ありがとうっ!お姉ちゃんっ!無理言ってごめんなさい!」
「いいよ!大事にするんだよ」
「うんっ!……でも、お姉ちゃん……携帯すぐに見付かりそう?」
「えっ?」
「そこそこ、草生えてるし探すの大変なんじゃ。番号言って!俺、掛けてあげるから」
「ありがとう…でも…今日、買ったばかりだから番号覚えてなくて…大丈夫だよ。さあ、遊んでおいで!」
「でも…」
「大丈夫だよ!ねっ!」
「分かった…じゃあ、俺、行くね」
「うん、じゃあね」
「うんっ!バイバイ!ありがとうっ!お姉ちゃんっ!」
男の子は笑顔を見せて走り去った。
「最初、何て子供だって思っちゃったけど…素直な男の子…子供相手に大人気なかったかも…」
「…………」
「さて……携帯探さなきゃ!」
だけど、何処に飛んだのかは全く検討つかない。
「はあぁぁ~…」
その時だ。
「うわっ!ビックリした!!郁海っ!?」
「えっ?りゅ、劉騎ぃっ!?」
「何してんだ?不法侵入だぞ!」
「し、仕方ないでしょう!?携帯が……」
「えっ?」
「な、何でもない!」
「………………」
私は背を向ける。
スタッ
背後から足音が聞こえる。
振り返った瞬間、私の視界には鉄柵を飛び越える人影。
ドキン
そして着地する。
「で?携帯が何?携帯がどうかしたのか?」
「べ、別に良いし」
「良いからっ!説明しろよ!」
「…携帯が……」
「うん」
「この敷地内に入ったの!」
「……うん……どうやって入ったんだよっ!ありえなくね?」
「なっ……!」
「携帯が宙にでも浮いたのか?それはそれで凄くね?」
「違っ!!やっぱり言わなきゃ良かった!もうっ!良いっ!帰って!私、一人で探すからっ!」
私は劉騎を押し退け帰るように鉄柵に押しつける。
「からかって意地悪するようなら帰ってよ!」
私は下にうつ向く。
「…………」
抱きしめられた。
ドキン
≪わわ…な、何?この展開は…劉騎に抱きしめられてる……!≫
「帰るわけねーだろ?一緒に探してやるから」
私達は気を取り直して探し始める。
辺りは暗くなり探すのにも一苦労しはじめた頃
「劉騎……もう…良いよ…」
「諦めんのか?」
ドキン
「えっ?」
「大事な物なんだろう?」
「……そうだけど……」
「…あっ!お前、今日買ったんだよな?自分の小遣いで買ったって。探しながら、そう話してたよな?」
「うん……」
劉騎は鉄柵を飛び越えると何かをしだす。
すると私の視界に草むらから光る物が見える。
「えっ?」
私は歩み寄ると、手を伸ばす先には、もう1つの別の手が ――――
「ほらっ!」
視線を辿ると劉騎が既に戻って来ては私に携帯を差し出した。
「お前のに間違いない?」
「うん……」
「良かったな」
「うん……」
私は携帯を受け取り頭をポンポンと劉騎にされた。
ドキン
「帰るぞ!」
「ありがとうっ!」
「……………」
「別に…」
私達は帰る事にした。
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