(6)

 ひたすらに気まずい一日が終わり、とうとう放課後に。


 あの後遅れて教室に入ってきた藤島には怪訝けげんな目で見られるし、どうするのが正解なのか分からなくてただひたすらにトイレか寝たふりを続けることになったのはさておき、とうとう告白の時間になったわけですが。


 これ、どう動けばいいんですかね。未だに自分の席から動けないわけですが。もはや教室には私と藤島以外誰もいなくなっていて、遠くから部活をやっている声が聞こえてくるだけだった。


 っていうかなんで藤島動かないの。何かアクションがあればきっと私も動けるのに。なんて嘆いていても状況が進行しないのはこの数十分で嫌というほどに分かったので、意を決して立ち上がる。少し遅れて藤島も立ち上がった。……いやなんで?


 一緒になって立ち上がる意味あったのかな。なんか起立、礼の号令みたいになっちゃったし。もう一回着席するべきかと半分混乱している頭で腰を下ろしかけ、流石にこの空間を延々と維持し続けるわけにはいかないと思い直して藤島に近寄る。


「ふ、ふふ、藤島ぁー」


 滅茶苦茶どもった。ついでに緊張で笑顔もひきつってるし、これ光量的になかなかホラーな絵面になってるんじゃなかろうか。やっちまったかと藤島を覗き見ると、若干引き気味だった。やっちまってんな、うん。


「お、おう。なに?」


 初動でミスってしまった感がどうにも拭えない。いや、こういう時こそ切り替えが大事だ。とは思うものの今すぐには無理そうなので、一度深呼吸をしてこの場は一時撤退を選択。


「……帰ろっか」

「……そーだな」


 まぁ、対象も一緒に移動する時点で緊張は解けそうにないけれども。






 そんなこんなで帰り道。


 二人並んで歩きながら、帰路に就いたことを若干後悔していた。


 うん、これ何も考えずに校舎出ちゃったけどどこで告白するつもりだったんだろうか私。思い付きだけで動くんじゃなくてもう少し計画性をもって云々と事あるごとに言われてきたのが今リアルタイムで骨身に染みこんでる。


 とはいえこんなん計画をもって行動とかそもそも私にできるわけないだろと棚上げにしようとしても現状何が変わるわけでもなくただ虚しくタイムリミットが迫るのみ。いいから頭を回せ。


 さてどうしよう。流石に往来のど真ん中で公開告白する度胸なんて持ち合わせてないし、でも早くしないとこのままだと分かれ道に差し掛かっちゃうしっていうか藤島は何も言ってこないしでお菓子欲しいの一言すらないのってなんか変じゃないのって今はそれどころじゃなくて、とずれた方向に加速し始めた脳内に、あっと閃いた。


「ねぇ、藤島。ちょっと寄り道しない?」

「いいけど。どこ?」

「神社」

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