天の川の上水道施設で働く青年と老人が、水源のトラブルを解決すべく奮闘するお話。
幻想的な星の世界を描いたファンタジーです。なんなら童話かおとぎ話と言ったほうが近いかもしれません。遠い宇宙の彼方に暮らす、人や動物や星々の不思議な世界。想起される風景がとにかく幻想的で、どこか牧歌的な雰囲気すら感じられるのですけれど、同時にただ長閑なばかりでもないところが魅力的でした。バイクを駆っての面倒ごとの始末に、巨大な害獣の討伐と、ところどころそれなりに物騒だったりする感じ。
その際たる例と言っていいと思うのですけれど、終盤入り口あたりのひと幕、星々の上げる断末魔がもう本当に好きです。丸呑みされる彼らが悲鳴を上げるのはいいとして、その語彙というか単語の選択センスから滲む圧! もう本当に大好き。絵面的にどう解釈しても地獄絵図っぽいところも含めて、とにかく鮮烈な印象を残してくれた場面でした。なんだったら性癖をくすぐられてしまったような部分もあったり。
うまく魅力を説明できないのが悔しいです。例えば「独特の感性」と、どうしても曖昧な表現になってしまって、でも本当に他に言いようがない。童話や絵本のような雰囲気でありながら、ただ穏やかで綺麗なばかりでもなく、といって癖やアクのようなものだけが先行するわけでもない。ほかでもない「この世界のこの光景」らしさを感じさせてくれる、絶妙な個性の味わいが楽しい作品でした。