第2話 デイケア
デイケアでの活動は、入院中のプログラムで一度参加させてもらった。
その時のテーマは「お酒に代わる活動」であって、本を読んだり、音楽を聴いたり、うたた寝をしたり、大分ラフな活動が綴られている中、僕が真っ先に目を付けたのが「アイロンビーズ」だ。
アイロンビーズで可愛いキャラクターを作っているネットの動画を前から見ていて、すごく気になっていたものであるから、今自分の目の前に、しかもパーツの購入費用無しで、作成が出来るなんて、なんて素晴らしき事かな!
神様、ここ最近マジありがとう!テンキュー!
それを機に毎週水曜日は、9時〜15時までデイケアを通う事になった。
本日は令和元年10月10日の木曜日である。つまり、昨日、退院後はじめてのデイケア参加となった。
デイケアの様子はアルコール依存症や精神障害の方々がゆっくり過ごす場所として、提供され、室内もとても綺麗である。そしてとても賑やかであるグループと、無言で下を向いているだけのグループと両極端であった。
僕は初日からアイロンビーズ制作に夢中になり過ぎて、そういえば周囲の人間観察があまり出来なかったのが残念だ。
しかも、集中して三作品も創作で作ったので脳みそはオーバーヒートしているし、何よりビーズを掴む為のピンセットを待っていた右手が痛い痛い…。腱鞘炎にならないよう、来週からはペースを下げて余裕を持って取り組んでいきたいと思っているしだいでございます。
活動中、30代の若い男性が一回話しかけてきた。
「おいくつですか?」
僕は
「はい、41歳です。」
男性は
「えー、若く見えますね。」
僕は返しに、男性の年齢を聞いて30代だと教えてもらった。おそらく、同年代の悩み仲間が欲しかったのだろう。
男性はアルコール依存症と精神病を抱え、今は無職になり、とりあえず毎日デイケアに通わされているらしい。彼の言葉からは
「つらいですよね。お酒飲みたいですけど主治医が厳しくて、すぐに入院だぞって言ってくるんです。でも精神病もあって毎日鬱から抜け出せないんでいるんですよ。仕事したいなー。」
まるで、入院前の僕をそのまま再現している様な鬱っぷりだったので、すごく共感するのであるが、まさか、
「僕は今、調子が良くてデイケア前日以外の日はお酒を楽しんでますよー。
」
とか
「ジョギングいいっスよ!鬱ふっとびますよ!」
とは言いづらい空気であったので、僕が何とか返せた返事がこうだ。
「そうですね。アルコール依存症も精神病も一生治らないって言いますからね。頑張って酒を絶って、鬱を少しでも安定させる為に規則正しい生活を送りながら、病気とうまく付き合って生きていくしかありませんから。まあ、焦らずに少しずつ改善していきましょう。」
と、言ってみると、男性は
「はあー。やっぱりそうですか…。ああ、つらいな。」
とか言いながらも、特に一日何の作業もせず、椅子に座ったまま、ボ〜としたり、俯いたり、しまいにはソファでゴロゴロ横になっていやがった。
よく見ると、寝心地のよさそうなソファが3つあり。3人の男性が横になっていて、そのうち1人は大きないびきをかいていやがる。
ここから、社会復帰できる人なんて居ないんだろうな〜と冷ややかな目でみている僕がいる。だけど、通い続けている間に誰がどんな人間ドラマを演じてくれるか分からないから、批判的な目線はやめよう。
外から見たら、僕も同じ社会不適合者なのだから。
第3話 医師の予言 に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます