❀ 第弐部 第玖章 修行の日々と蘇る過去 ❀
第壱話 【 新たな特訓 】
神楽と夜影衆が、祠に移り住んでから数日後。
灰夢は夜影衆の子供たちに、術を教えていた──
──はずが、何故かノーミーと遊んでいた。
「ふっふっふっ! ワタシのターンデスよっ!」
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ノーミーが鋼の狂戦士を召喚し、灰夢に差し向ける。
「ベルセルクを使って、
「ふっ……。甘いな、ノーミー……」
「──何っ!?」
「トラップカード発動ッ!
「──なっ、まさかっ!」
「このカードは、一度だけダメージを跳ね返すことが出来る」
「そんな、バカな……」
「いけ、素戔嗚尊ッ! ベルセルクを返り討ちにしろッ!」
『 ──ヴオォォォォアアアアァァァァアァァァァァアアァアッ! 』
狂戦士の攻撃を弾いて、素戔嗚尊が狂戦士を貫く。
「まさかっ! ワタシのベルセルクが一撃で……」
「どうした……。俺のバトルフェイズは、終了してないぜッ!!!」
「──なッ!?」
「──速攻魔法発動ッ!
「まさかっ! そのカードは……」
その瞬間、灰夢の前にいた素戔嗚尊と
「俺は素戔嗚尊と魔天狼を墓地に送り、
「ここに来て、新たなモンスターがいるデスかっ!?」
「闇より来たれッ! 太陽を喰らう影狼・牙朧武ッ!!」
『 ──ワァオオオォォォオォォォオオオォォォォォオオオンッ!! 』
その呼び掛けと共に、影の中から牙朧武の完全体が姿を現す。
「──なっ!? まさか、このモンスターはっ!? 伝説の……」
「闇のゲームの恐ろしさを、その体に教えてやろうッ!」
「バカな、こんなモンスターを召喚できるわけが……」
「戦う相手を間違えたな、ノーミー……」
「そんな、そんなのを食らったらっ! いくらワタシでも……」
「殺れ、牙朧武……」
【 ❖ 滅びの
「 ──ぐわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああああっ!! 」
シャボン玉のような極小サイズの、小さな牙狼砲が放たれ、
ノーミーの目の前でパチンッと弾けると、ノーミーは倒れた。
「くっ、さすがダークマスター……。恐るべし、デス……。ガクッ……」
「まぁ、ざっと言えば。こいつとのコミュニケーションは、こんな感じだな」
「…………」
灰夢とノーミーの、よく分からないノリノリのデュエルを、
恋乾三姉妹の末っ子、
「他の大精霊より個性的だが、精霊術の数は一番多彩でユニークだ」
「……そう、なのですか?」
「あぁ……。だから、お前の土遁の術に使えそうなのを、よかったら聞いてみな」
「はいっ! 頑張るですっ!」
「よし、その意気だ。困った時は、いつでも俺に言え……」
「わかりました、ありがとですっ! 運び屋のお兄ちゃんっ!」
笑顔を見せる夜道の頭を、灰夢が優しく撫でると、
夜道は子犬のような純粋な瞳で、灰夢に甘えていた。
「ノーミー、お前も頼むぞ……」
「ダークマスターの頼みなら、この地の大精霊も一肌脱ぐデスよっ!」
ノーミーが流し目をしながら、服をずらして肩を見せる。
「それ以上服を脱いだら、俺の口から牙狼砲をぶち込むからな?」
「──えっ!? そんなことできるんデスかっ!?」
「ったりめぇだろ。幻影呪術は俺も使えるんだから……」
「……ちょ、ちょっと見てみたいデスね」
「なら、その
「それはちょっと、見る代償がデカすぎるデスよ」
「わかったら、とっとと教えてやってくれ」
「了解デス、任せるデスよっ!」
ノーミーが精霊術を、夜陸に見せながら説明していると、
灰夢の後ろにいた牙朧武が、人型の元のサイズに戻った。
「これで、四大精霊全員の担当が決まったな」
「あぁ……。火、水、土、風の能力は、こいつらが何より適材適所だ」
「まぁ、それはまず間違いないのぉ……」
「実践での術のレパートリーは、これで何とかなるだろ」
「学生の子供たちは、練習に誘わなくてもよいのか?」
「あいつらは、今、冬の期末試験が控えてるんだとよ」
「なるほどのぉ。あとは、あやつらじゃが……」
牙朧武が後ろで、ミーア、クラーラと触れ合う、
沙耶、透花、雨音、雅弥、飯綱の五人を見つめる。
「雅弥と雨音はともかく、沙耶と透花は俺しかいねぇか」
「やはり、体術がメインになるからのぉ……」
「そうだな。まぁ、今できることをやってみっか」
そういうと、灰夢は子供たちの元へ向かっていった。
「あっ、運び屋さん。おかえりなさいっす」
「おう、待たせたな」
「狼くん、お姉ちゃんたちは何するの〜?」
「一応、修行なんだが。……雅弥は必要なのか?」
「もちろんだよっ! お姉ちゃんも、もっともっと強くならなきゃねっ!」
「お前、今の時点でも充分強いだろ」
「だって、お姉ちゃん。狼くんに負けちゃったもん」
「いや、俺ら月影と比べんなよ」
「でもでも〜っ! お姉ちゃんだけ仲間外れは嫌だ〜っ!」
「クソめんどくせぇ……。なんなんだ、コイツ……」
雅弥が泣きべそをかきながら、灰夢に胸を押し付けるように抱きつく。
「雅弥を泣かせた。月影、許さねぇでごぜぇます」
「はぁ、更にめんどくせぇのが増えた」
抱きつく雅弥を引き離しながら、灰夢が面倒くさそうな表情を見せる。
「……分かったから、とっとと離れろ」
「ならなら、お姉ちゃんも入れてくれるっ!?」
「構いやしねぇが、手加減しねぇからな?」
「いいよいいよっ! もう、ビシバシしごいちゃってっ!」
大きな胸をポヨンッと張りながら、雅弥はドヤ顔を見せつけていた。
「あの、運び屋さま……」
「どうした? 雨音……」
「ワタシも、参加しても宜しいですか?」
「別に構わねぇが、雨音は戦闘員じゃねぇんだろ?」
「はい。ですが、少しでも皆様に追いつきたくて……」
「まぁ、手加減をする気はねぇが、それでもいいなら好きにしな」
「やった! 是非、お願いしますっ!」
灰夢の言葉に、雨音もワクワクした表情を見せる。
「それで、何をやるんすか? 運び屋さん……」
「せっかく植物庭園にいるし、【 鬼ごっこ 】でもするか」
「「「 ……え? 」」」
「なんだよ、おかしいか?」
「いや、なんかこう、修行としてどうなのかね? それは……」
「沙耶……。お前、鬼ごっこなめんなよ?」
「……え?」
真顔で睨む灰夢の真っ直ぐな視線に、沙耶がゴクッと息を飲む。
「前に俺が、工藤のガキを連れて逃げた時、お前ら捕まえられなかっただろ」
「まぁ、確かに……」
「鬼ごっこでは、相手の動きを先読みする勘が必要とされる」
「でも、結局は足の速さじゃないっすか?」
「異次元に速いと話にならないが、多少の差ならテクニックで埋められる」
「……テクニック?」
「そうだ。それを身に付ける為に、修行では自分より足の速い敵である必要がある」
「つまり、鬼役って……」
透花の言葉を聞いて、灰夢が身体から黒いオーラを放つ。
「ルールはない。あの時のように、何をしてでも俺を捕まえれば勝ちにしてやる」
「ゴクリッ……。やっぱり、運び屋くんを捕えるのか」
「それって、運び屋さんも全てを使ってくるってことっすよね?」
「それじゃ話にならねぇから、血壊死術以外の死術は使わねぇでおいてやる」
「血壊死術だけでも、十分にやばいんすけど……」
灰夢たちの会話を聞いて、雅弥がビシッと真っ直ぐ手を上げる。
「ハイハイ、質問ですっ!」
「はい、雅弥……」
「お姉ちゃんも、煙にはならない方がいいよね?」
「いや、それは使っていい。じゃなきゃ、修行にならねぇからな」
「……そう? でも、お姉ちゃん、沙耶ちゃんに補正かけられると、もの凄く速いよ?」
「その為に、俺も血壊死術を使うんだ。まぁ、考慮はしてっから気にすんな」
「そっかそっか、りょ〜かいっ! それなら、お姉ちゃんも頑張っちゃうゾっ!」
「だから、誰がお姉ちゃんなんだよ。小娘が……」
冷めた視線を送る灰夢の後ろから、ミーアがクイクイッと袖を引く。
「……ん?」
「あの、お兄さま……」
「どうした? ミーア……」
「ワタクシも、おにごっこ? ……とやらに参加しても宜しいでしょうか?」
「……ミーアもやりたいのか?」
「はい。なんだかとても、面白そうなので……」
「別に構わねぇが、割と本気で俺も逃げんぞ?」
「はい、大丈夫です。その方が、ワタクシも全力で動けますので……」
「そうか。なら、お前は他の服に着替えてこい」
「……え?」
「せっかくの綺麗なドレスが汚れたら、台無しになっちまうからな」
「はい、分かりましたっ! では、すぐに着替えてまいりますね」
「……おう」
ミーアは嬉しそうに笑うと、ビュンッと一瞬で姿を消した。
「……えっ?」
「……ど、どこにいきやがったでごぜぇますか?」
『普通に、部屋に着替えを取りに向かったのかと……』
唖然とする雅弥と飯綱に、竜の姿をしたクラーラが答える。
「……き、消えちゃったよ? ミーアちゃん……」
「……飯綱の目にも、見えなかったでごじぇます」
「……いいか? 雅弥、飯綱……。よーく覚えとけ……」
「「 ……? 」」
「 ミーアが本気を出したら、この中で一番速いぞ 」
「「 ……え? 」」
すると、ミーアは汗一つかかずに、ジャージ姿で戻ってきた。
「すいません、お待たせ致しました」
「いや、その速度の着替えに怒るやつはいねぇよ」
ペコペコと頭を下げるミーアに、灰夢が呆れた視線を送る。
「……ミーアちゃんって、何者?」
「ワタクシは竜と契約した半竜、ドラゴノイドでございます」
ミーアは笑顔で答えると、大きな竜の尻尾をフリフリと見せていた。
「な、なるほどでごぜぇます……」
「確かに……。これは、お姉ちゃんも追いつけないなぁ……」
「まぁ、今回の標的はこの俺だ。……そう警戒すんな」
「そうっすね。ミーアさんが味方な分、心強いっす」
「ボクたちの力を、見せてやろうじゃあないか」
「場所は植物庭園の中、制限時間は二時間だ。……いいな?」
「「「 ──了解ッ! 」」」
「そんじゃ、一分経ったら捕まえに来い。捕まえられなかったやつは晩飯抜きな」
「「「 ──ええぇぇぇぇぇぇええええええっ!? 」」」
灰夢は捨て台詞を吐くと、パッと目の前から姿を消し、
周囲の木々を渡りながら、森エリアの中へ消えていった。
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