2020 Season:Winter

Episode.4-0 プロローグ

 冬。

 生命が耐え忍ぶ季節。


 ずっと俺じゃない誰かを目指してきた。

 誰かの願う姿に、皆が望む姿になろうとした。

 そうすれば、それがいつか価値となって自分の糧となるからと。

 そう信じて、耐え忍んできた。


 冬が終われば春が来て、生命たちが芽吹き、忍耐から解放されるのだと、皆は言う。

 ならば、その春はいつ来るのだろうか。


 閉じ込め続けた何かが叫ぶ。

 殺し続けた何かが嘆く。


 ――苦しい。いつまで待てばいいの?

 ――息ができない。いつまでこのままなの?

 ――辛い。いつまで……


 その声も全て沈めて、今日も俺は笑う。

 みんなが望む俺になるために。



 たとえ、心が粉々に砕けようとも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る