少しの間、ご厄介になります

黒い狼は私の持っていたドーナツに食らいついた。

(びっくりした。お腹が空いてたのかな?)


「スンスン。ワン!」

「もう一つ欲しいの?」

「クゥン」

「分かった。もう一つだけね?」

「ワン!」


大きな黒い狼はお腹が空いていた様で出したドーナツは直ぐに無くなった。

(大きなワンちゃんみたいだな?さっきから尻尾をめちゃくちゃ振ってる。それに、頭も良いみたいだ。私の言ってる事が分かるみたいだ)


「可愛いな。食べたら帰りなよ?」

「ワフ!」

「フフ。あ、そうだ!イズミ、私達今夜は何処で寝ようか?」

「みゅぅ、、」

「うん。少し、難しい問題だね?」

「ワン!ワンワン!」

「ん?どうしたの?」


黒い狼は私達に背中を向け首をクイクイッと動かした。

(乗れっていう事かな?、、やっぱり、頭が良い子だな。私が言ってる意味を理解してる)


「もしかして、君の家に泊めてくれるの?」

「ワン!」

「、、、ありがとう」

「みぃ!」


私達は泊めてくれるらしい黒い狼の背中に乗った。

(硬い毛なのかと思ったけど、凄い柔らかい。もふもふだ~)


「ありがとうね?今日は厄介にっ!」

「ガヴッ!」

「みぃ!」


悪性の気配が近づいて来るのを感じて二匹が警戒している。

(あの男、私達が町を出た事をもう気づいたのか!、、、何故か、悪性がさっきよりも濃くなってるような?)


「あの吟遊詩人、何処に行った?あそこまで浄化出来るという事は神聖者くらいしか居ないはず。さっさと探して出し、あの方にお渡ししなければ!」

「(あの方?、、、黒い狼くん。今日だけじゃなくて、しばらく厄介になっても良い?)」

“コクリ”

「(ありがとう)」


黒い狼くんが頷いてくれたので、黒い狼くんの家にしばらく厄介になる事にした。

(下手に動いて捕まるよりは、帰るのが少し遅くなる方が良いよね?)


黒い狼くんは音をたてずに男が居る場所を離れた。

結構な速さで走っているので私は振り落とされない様にもふもふな毛にしっかりと捕まった。



数キロ走った黒い狼くんは大きな洞窟?の近くで止まった。


「ここが君の家?」

「ワン!」

「中を見ても良いかな?」

「ワンワン!」


黒い狼くんは私達を乗せたまま洞窟?の中に入った。

(洞窟みたいだけど少し違う?、、、あれ?奥の所にあるのって)


「ここ、人が住んでたの?洞窟の奥に続く道にドアがある」

「クゥン」

「ここに住んでいた人が君の主人?」

「ワン」


黒い狼くんは元気のない声で返事をした。

(私は隠密科じゃないから良くは解らないけど、ドアノブにホコリがそこまでたまって無いって事は、黒い狼くんの主人は居なくなってそんなにたってないって事だよね?)


「君の主人はいつ居なくなったの?4日くらい?」

“ふるふる”

「じゃあ、一週間くらい?」

「ワン!」

「一週間くらいか、、、。君は大きいからこのドアを通れなかったの?」

「ワン!」

「お留守番してたのかな?」

「ワン!ワン!」

「そうなんだ。君の主人はいつもは1日か2日くらいで帰って来た?」

「ワン!」


黒い狼くんの主人は洞窟の中で何かトラブルが起きて帰って来れないか、最悪もう生きて無いかのどちらかだ。

(うーん。探してあげたいけど、私だけだと弱くて戻って来れないだろうな。けど、、、)


「黒い狼くん。私がドアの中を見てくるよ。ただ、私は弱いからドアの近くだけ見てくるよ」

「クゥン?ワンワン!クゥン?」

「?、、、あ!もしかして、心配してくれてるの?」

「ワン!」

「ありがとう。けど、直ぐ近くだから大丈夫だよ?もし、何か出ても走って逃げるよ」

「クゥン、、、ワン!」

「うん。それじゃあ、行って来るよ」

「ワン!」

「イズミも一緒に行く?」

「みぃ!」

「うん。じゃあ、行こう」

“ガチャ”


私達はドアを開けて洞窟の中に入った。



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