第4話「パピコ」

 セミが元気よく鳴り響く季節。

 降り注ぐ日光と紫外線が地面と肌を容赦なく焼き、気温と体温を上げてゆく。

 歩くだけで額からは汗が滴り落ち、ほほを伝った汗は顎から地面へと落ちてゆく。

 そんな暑いなか終えた部活動。その終了の合図とともに誰かが「コンビニに寄ろう」と言い出した。全員がそれに賛同しゾロゾロと学校近くのコンビニへと向かう。

 高校生の夏にはどこにでもあるような一幕。もちろんコンビニに入り「涼しいー」と声に出すまでがセットである。

 皆目的は様々だけれども大部分がアイスコーナーへと向かう。

 思い思いにアイスを手に取りレジへと向かう。

 安いアイスを手に取る友達がいれば、奮発して高級アイスを手にする友人、追加でジュースやおにぎりを買う友人、敢えてホットチキンに手を出す猛者までもがいた。

 俺自身は月末付近はこれを選ぶ「パピコ」

 コンビニを出た後は駅に向かいながらアイスを食べ歩く。

 その列の最後尾でパピコの袋を開ける。

 横から手元に視線を感じる。

 横に並び歩くのは幼馴染で部活のマネージャーの女の子。汗だくになりながら歩く彼女の手にはアイスが握られていなかった。計画性のあまりない彼女は普段趣味を優先してお小遣いを使用するために月末は金欠になる。結果として一人アイスを変えない状況になってくるのである。

 「食べる?」

 俺は残っている片方のパピコを差し出す。

 「いいの?」

 「うん」

 ぱあぁというような効果音がつきそうな笑顔で彼女はパピコを受け取る。

 早速食べ始める彼女。何かを思い出し、嬉しそうにパピコを咥えながら「ありあとう(ありがとう)」と感謝の言葉を話す。

 「どういたしまして」の言葉とともにふっと笑顔がこぼれる。

 アイスを嬉しそうに頬張る彼女にならパピコの片方、雪見大福の1個くらいなら挙げたしまっても構わないかなと思う。

 そんな気持ちにさせてくれる彼女の笑顔は夏の太陽にも負けない眩しい笑顔だった。

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