第8話 黒
ドシン
俺は洞穴の底まで落っこちた。
洞穴の底は少しスペースがあり、真っ暗なので奥の方はよく分からなかった。
(いてててて…ふざけやがってあのウサギめ)
怒りに沸沸と震えていると、上から何か落ちてくる音がした。
コロコロ、コロコロ、ボテ
(何が落ちてきたんだ?
…で、伝説の黒人参じゃないか?)
一体なぜだ、何が起きるんだ?
と恐ろしく感じていると、
グルウウ…グルウウウ…
と奥の方から聞こえてきた。
赤く光るものが2つでてきた。
(目だ!赤い目が光ってるんだ!)
近づいてくる。俺はさらに恐ろしくなった。
「なんでネズミと黒人参が一緒に落ちてくるんだ。鴨がネギ背負ってくるってか。」
(またウサギだ!今度は黒うさぎが現れた!)
「う、うさぎ。お前も喋れるのか?」
と、問いかけると。
「すまんが命乞いには耳を傾けないんだ。次は狐にでも生まれ変わりな。」
と言い放ち、襲いかかってきた。
慌てて逃げようとしたが、洞穴は狭く逃げ場がない。
体格差が大きくあっけなく捕まった。
そしてすぐに喉元に食らいついてきた。
(や、ヤバイ。マジでパワーが違いすぎる。無理、死ぬ。)
「へ、ヘイウォレット!」
俺は慌てて叫んだ。必死に抵抗しながら落ちてくるトークンを掴んだ。
たった1つしかないトークン。白うさぎの両替商。
藁をもすがる気持ちで目の前に投げようとした瞬間、
バシ!
黒うさぎに俺は手を掴まれた。
内心、終わったと思ったが、黒ウサギのリアクションは想像と違っていた。
かなり驚いたように、
「おい、なんでお前がその伝説の白うさぎを持っているんだ!」
と聞いてきた。
「しかもウォレットを見る限り、ここらへんのもんじゃないなぁ…
ま、まさか!お前は人間!!?」
「そ、そうだ人間だが、今はわ、訳あってネズミの格好をしているんだ。」
声を震わせながら、死なずに済むかもと期待を感じていた。
「ウォレットも空だし、完全に誰かに騙されているそ!
こんなもん使うんじゃない!お前の身体が乗っ取られるぞ!」
黒うさぎは力づくで捕まえていた身体を離し、
トークンごと掴んだ俺の手をそのまま掴みながら、
「これはある条件で使うと、人間の身体をのっとることができる唯一のトークンなんだぞ!」
おれは腰が抜けた。さっきまで死にそうだったのに今更、と思うかもしれないが、
あのウサギが狙っていたのは、俺のこの身体だったということに驚愕したのだ。
「そ、そうなのか。ありがとう。で、でもなぜそれを知っているんだ?」
「ふ、懐かしい話をすることになるな。
…大昔、実は俺はもともと人間で、このトークンによって黒うさぎと身体が入れ替わったんだよ。
…俺は昔、侍だったんだ。」
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