第7話 着替え
洞穴のほうに近寄って行ったがそれはそれは小さい穴で、ウサギが入るのがやっとのようなサイズだった。
「おい、俺はこの洞穴には入れないぞ。」
「安心するぴょん。僕の持ってるトークでお着替えすればいいぴょん。」
「着替えって、あのなぁ、、、」
うさぎはまたトークンを取り出した。
「これはスキントークン。この世界ではなりたいものになれるぴょん。僕が持ってるこのスキントークン、モデル”幸せの国のネズミ”に着替えれば、小さくなってこの洞穴に入れるぴょん。」
ウサギは間髪入れずに俺に向かって投げてきた。
「うわっやめてくれ!」
しかし、
…何も起こらなかった。
「おっと、ごめんごめん!取り乱さないでぴょん。
無断で着替えさせることはできないぴょん。」
よく見ると、
トークンは俺の前で浮かんでいて、文字が書いてあった。
スキントークン
モデル:幸せの国のネズミ
に着替えますか?
「決めるのは自分ぴょん!一緒に友達に会って欲しいぴょん!」
俺は迷っていた。ウサギは続けた。
「僕はずっとこの瞬間を待っていたんだ!君がこの世界に来てくれて、
崖に登ってくれて、伝説の黒人参を掘ってくれて、本当に嬉しかったんだ!
頼むよ!」
確かにこの1時間ほどの体験は、
ここのところの退屈な人生では味わえないエキサイティングなものだった。
ウサギはさらに続けた。
「あの時、僕に触れてこの世界に飛び込んだように、
これから起こる新しい体験を信じて欲しい!最後に決めるのは自分ぴょん。」
最後に決めるは自分。
やけに胸に刺さる言葉だ。
「よーし、わかった着るよ!」
決心した瞬間に、目の前のトークンはバッと広がり自分を包み込んだ。
グングングングン
さっきまでの小さい洞穴はトンネルのようなサイズに見える。
目の前の世界が変わったようだ。
ウサギは見上げるほど大きく、
口元が不気味に緩んだように見え少し恐怖を覚えた。
次の瞬間、
雷に打たれたような不安が身体中を駆け巡った。
「おい!うさぎ!そういえばさっき、”黒人参を掘ってくれて”って言ってたけど、
崖を登ってないお前がなぜそれを知っているんだ?
人参は崖の上で刺さってたから確かに掘ったけど、お前は空から落ちてくるところを見ただけなんだろ?」
ウサギは一切動じずに答えた。
「それは簡単な話ぴょん、洞穴をよく見てご覧。」
振り返って洞穴をよく見たが特に何もわからな…
ドン!!!
あまりの衝撃に何が起きたのかわからなかった。
ゴロゴロゴロ
俺は洞穴を転げ落ちていった。
ウサギに背中を蹴られたんだ。
俺はウサギに騙されてたんだ。
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