第4話 NFトークン

「ヘイ!ウォレット!」


シューン、シュンシュンシュン


うさぎが急に変な言葉を発すると、どこからともなく沢山の白い光の粒が降りてきて、綺麗に整列して宙に浮いていた。


「な、何したんだ?」


うさぎは問いかけには答えず、光の粒を選んでいるようだ。


そして、1粒の光を捕まえると目の前に離した。


ボンッ


光の粒が弾けた。見たことのない乗り物がどこからともなく現れた。


(…スクーター?)


「おいおい、説明してくれよ。何してるんださっきから?」


「あとで話すぴょん。とりあえず乗りなぴょん。」


軽く投げられたヘルメットを両手でキャッチした俺は、言われるがままついていくだけだった。


ヒュルルルーン


(すげぇな、この乗り物。宙に浮きながら走ってる。。)


「これはね、うさぎ用ビークルモデルフォックスだぴょん」


(フォックス…狐はうさぎの天敵じゃねぇか!)

「…さっき、光の粒がずらっと並んでたけど、あれは?」


「まぁ、いわゆるアイテムだぴょん。こっちの世界ではNFトークンって呼んでるぴょん。ウォレットってので管理しててな、さっき発した言葉覚えてるぴょん?」


「ヘイウォレット?」


シューン、シュンシュン


!!!

あの時の音だ。白い光の粒が降ってきそうな音。


しかし、光の粒は俺の前には降ってこなかった。


代わりに目の前に白い文字で「どこを探してもあなたのNFトークンは無いみたい。」と浮かび上がった。


「こ、これは?」


「そうだぴょん。君にもあるんだよウォレットが。さっきの発言がちゃんと反応したみたいだぴょん。中身空っぽだけどね。」


うさぎのビークルの後ろで、風を切りながら、俺は異世界にきた実感と共に密かに興奮していた。


ヒュルーン。ヒュンヒュン。


うさぎ用モービルは停車した。


「着いたよ。あれが伝説の黒人参だぴょん。」


この世界にたどり着いておそらくまだ10分弱、早くも俺は伝説のアイテムにたどり着いたらしい。


俺は徐々に突っ込むことを忘れていっていた。

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