第3話 目的

「…… おーい!……おい!大丈夫ぴょん?」


(…ん、)


「おーい!起きてぴょん」


(…声が聞こえる。)


目を開けたら目の前にうさぎがいた。


うさぎを見た瞬間、さっきまでの奇妙な出来事を一気に思い出した。

そう、俺は変なうさぎに唆されてここにいる。


周りを見渡すと木々が生い茂っている。森のようだ。


「ど、どこだここは?森にいるのか?」


また俺はありきたりな言葉でうさぎに問いかけた。


「ここは、クリプ島のてっぺん山だぴょん。

リアルワールドと繋がる唯一の場所だぴょん。後ろを見てみるぴょん」


後ろを振り返ると、木々に囲まれた山の中にポツンと1つの便器があった。


あまりの違和感に呆気に取られたが、驚きの連続で少し落ち着いて物事を捉えられるようになってきていた。


「おいうさぎ、この世界はなんなんだ?

シールに閉じ込められているから助けて。と言ってたけど、

ぴょんぴょん飛び跳ねているじゃないか?色々説明してもらおうか。」


うさぎは少しバツが悪そうに話し始めた。


「お、怒らないで聞いて欲しいぴょん。

助けて欲しいのは本当なんだけど、シールに閉じ込められていたんじゃなくて、あのシールがリアルワールドと繋がるための唯一のアイテムなんだ。」


うさぎは続けた。


「ここはクリプトワールドのクリプ島。

クリプトワールドはリアルワールドが生み出したデータの世界だぴょん。

僕の友達を助けたくて、全ての病を治すとされている万能薬アイテム、伝説の黒人参を手に入れるのに人間の力が必要なんだぴょん」


「それで嘘をついて俺に助けを求めたのか?」


俺が問い詰めると、


「アイテムの有効時間がものすごい短いんだぴょん」


と、うさぎはうつむきながら答えた。


「分かった。なるべくお前のお願いには答えてやろう。でもその前に質問だ。

俺は元の世界に戻れるのか?2時間後に仕事が始まるんだぞ。」


「戻れるぴょん。けどね、僕のお願いを叶えなきゃいけないんだ。」


「な、なんだそのふざけた話は。」

嘘をついた直後のこの図太さは自分の理解を超えていた。


「アイテムのルールなんだ。これはもうどうしようもない。

クリプトワールドは1度決まったことは遡れない。」


1度決まったことは遡れない。


ふざけたうさぎの言葉だが、なんとも真に迫った感じがして、そうなんだろうと納得するしかなかった。


「…んー。伝説の人参だっけ?そんなもん2時間でどうすりゃいいんだ。」


「安心して欲しい。実はもう見つかっているんだぴょん。」


俺はさらなる嘘に嵌められていくような感覚と、あまりにふざけた展開の可笑しさが混じり合って、冷静な判断力が失われているようだった。

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