ホラー展開なんて誰も望んでなんてねぇんだよ
2人は開いたドアを見続けて、ゆっくりと近づく。
「ね、ねぇ、ちょっと行ってみないか……?」
「まじ……??」
晋五は目を輝かせドアを見ながらそう問いかける。その表情を見て、明仁は苦笑いを浮かべ、冷や汗を流しながら一言だけ返答している。
その後、晋五はフラフラと、何かに誘われるように教室の中へと入っていく。
晋五の異様な雰囲気に恐怖を感じながらも、明仁は後ろを付いて行った。
「中は……、思ってたより綺麗なんだな。少し埃臭いけど」
「そうみたいだな。机も新校舎の教室と同じ並びだし、なんで片付けられてないんだろう」
「ま、まさかここの机に触ると、の、呪われるとか……?!」
身体を震わせる明仁を、呆れた目で晋五は見下ろしている。すると、掃除用具入れから何やら音が聞こえ始めた。
ガタガタと、物同士がぶつかり合う音が2人の耳に届き、体を震わせる。
「えっ。な、なに?!」
「鼠か何かか?」
明仁は音が聞こえた瞬間、晋五の肩を掴み隠れた。
そんな彼の様子にはもうツッコミを入れずに、掃除用具入れにライトを向けると、なぜか音は止み静かな空間に戻った。
「………鼠じゃなかった……のか……?」
「鼠にしては、あんな大きな音……。ありえないって。なぁ、やばいって……。もう帰ろうぜ」
「そ、そうだな」
さすがに怖くなってきたのか、晋五も震えた手でライトを落とさないように気をつけながらドアへと向かう。
明仁も晋五の手を離さないようにゆっくりとドアへと向かった。
────何処に行くの。置いていかないで
女性の悲しげな声が2人の後ろから聞こえた。
「い、今、声が……」
「き、気のせいだろ……」
2人は体をカタカタと震わせながら口を開く。汗が止まらない。手汗も酷い。
恐怖のあまりその場から動けずにいると、また声が聞こえた。
────ねぇ、眩しいよ。それ、必要?
その言葉と同時に、影から黒い手が何本も2人へと伸び、肩や腰、頭などを掴み逃がさないようにした。
「え。な、なん……」
「いやだ……やだ。なんで」
体を震わせる2人は涙を浮かべて何とか動こうとする。だが、恐怖でなのか、もしくは見えない女性のせいなのか。
その場から動けず、前を見続けるしか出来なかった。
────早く。それ。消して
そう聞こえた瞬間、黒い腕が2人の携帯へと伸びた。そして、次の瞬間。
嫌な音が、この静かな教室へと鳴り響いた。
ガシャン パリン
2人の携帯が床へと落ちてしまった。
先程も落としてしまったからなのか、携帯は壊れてしまったらしく、周りは暗闇になってしまった。
────ようやく、君達と遊べるね?
「や、やだ……」
「やめ……ろ……」
逃げたいのに足が震えて走り出すことが出来ない。そんな2人を見てなのか、先程から響いている女性の声は、いきなり笑いだした。
─────ふふっ。あははは!!!! ねぇ、遊ぼうよ!!! この、闇の中でさ!!!
甲高い声が教室内に響き渡った瞬間、2人の目の前に赤い瞳が現れ、歪な笑みを浮べた女性がじっと見ていた。
その目は、2人の反応を楽しんでいるのか………。それとも─────
「「うわぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」」
2人の悲鳴が教室内に響き渡った。
────ふふふっ。また、友達ができちゃった
2人の叫び声が教室に響き渡った瞬間、教室の電気が付いた。
すると何故か、今までいた2人は、忽然と姿を消していた。
誰もいなくなった教室は静かにドアが閉まった。
【やっぱり、光はいらないわね】
笑い声を上げて、教室の電気は消えた。
闇の中浮き出てきた女性の影と、赤く光る瞳。
その目からは生気は感じられず、まるで獲物を見つけたような鋭い目だった。
【闇は寒くて辛いの。だから、私と同じ人が沢山いれば辛くない。そうよね。ふふふふふふふあはははははははははははははは!!!!!!】
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