罰ゲームなんて人を殺すだけだろ

「というわけで、お前がババを持ってるんだから旧校舎行ってこいよ」

「なんでだよふざけんな!!」


 放課後、教室の中には4人の男子生徒が残っていた。


 最初に口を開いたのは、黒髪で清楚な雰囲気の男子、矢琶羽凛やはばりん

 次に口を開いたのは、猫っ毛の細い髪が色んなところに飛び跳ねており、ブレザーの前を開けている少し不良感がある男子。名前は天楽晋五かぐらしんご


 他の2人は苦笑いを浮かべ、呆れ気味に晋五を見ていた。名前は信翔しんかける芽瑠明仁めるあきひとだ。


 4人は旧校舎にある『開かずの間』の話を耳にして、なぜ開かずの間になっているのか確認しに行こうという話をしていた。

 しかし、4人で行くのはつまんないということになり、ババ抜きをして、ビリと3位の人が見てくるということになったのだ。


「くそっ、まぁいいわ。どうせ理由なんてねぇんだよ」

「えっ、本当に行くの……。嫌だよ俺……」


 そう言っているのは晋五と明仁だ。

 最下位が晋五で、3位が明仁だったため、ルール通りなのなら、この2人が旧校舎に行くことになる。


 晋五の方は特に怖がる様子を見せずに、ただただ面倒くさそうな表情を浮かべていた。

 明仁は怖いことが苦手なのか冷や汗を流し、顔を青くし少し体を震わせている。


「なんだ明仁、怖いのか」

「怖くないと言えば嘘になる」

「無駄なキメ顔サンキューな」


 凛の言葉にキリッとした表情で返す明仁。相当怖いらしい。それを隠そうとしないで返すのは凄いと感心してしまうところだ。


「とりあえず、さっさと行って戻ってくるぞ」

「うん……」


 晋五が率先して教室を出ていき、その後ろを明仁がオドオドしながら付いて行く。


 残った2人は鞄にトランプをしまい、暇を潰すため、携帯を取り出したりゲームを始めた。






「ここか……」

「なんで開かずの間って呼ばれてるんだろう……」


 旧校舎に向かった2人は、正面玄関の前で立ち止まり、立ち入り禁止という紙が貼られているドアを見上げていた。


 立ち入り禁止なため、錆びた鍵でドアが閉められていたのだが、鍵の意味など一切なく、晋五がドアを引くと簡単に開いた。

 2人は顔を見合せ、そのまま一直線に階段を上がり、噂の教室に辿り着いた。


「携帯の光じゃ少し不安だったか……」

「よし、今すぐ帰ろう。噂は嘘だったことにしよう」

「どんだけ怖いんだよお前……」


 旧校舎は一切光が入って来ないため暗い。

 足元に気をつけながら2人は、自身の携帯のライト機能を使い歩みを進めている。

 無言のまま歩いていると、直ぐに目的の教室に辿り着いた。


「ここまで来たんだったら、中を見てから帰ろうぜ。開かずの間って言ってる割には、見た目普通だしな」

「教室を間違えてるとかじゃなくて?」

「2年C組で間違いないはずだろ」


 そんな会話をしながら教室のドアを開けようと手を添えた。


「あ……、あれ?」

「どうしたんだ?」

「おいおい……、お約束じゃないんだからスムーズにドア開いてくれよ」

「ご親切に説明をありがとう。よし帰ろう」

「帰らねぇから」


 何かある度帰ろうとする明仁を軽く流し、何とかドアを開こうとする。

 それでもガタガタと音を鳴らすだけで開く気配がない。


「もしかして開かずの間って、ただ単純にドアが開きにくいから……とか?」

「それだったら嬉しいけどな」


 晋五は溜息をつき諦め、手を離した。ホコリが被っていたらしく、手をパンパンと叩き払い落とし、そのまま帰ろうと後ろを振り返った時、手を滑らせたのか携帯を落としてしまった。


 ガシャン


「うわぁぁぁぁあああ!!!!」


 ガシャン


「落ち着けアホ」


 晋五が落としてしまった携帯の音に驚き、今度は明仁が携帯を落としてしまった。

 その時、ライトが消えてしまい辺りが真っ暗になる。


「ちょちょちょ!!! 晋五いる!?」

「いるから落ち着け……」


 カタッ……カタッ……


 晋五の後ろからドアが開いたような音が聞こえた。

 ライト機能が戻った携帯で、2年C組のドアを照らす。


「えっ。なんで」

「おいおい……。なんで……ドアが開いてんだよ」


 明仁と晋五は顔を青くしながら、なぜか半開きになっているドアを見続けた。

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