12話 それぞれの罪
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毎朝、
目を覚ます度に
「さよなら」の練習をする
*****
「おはよう。」
リビングのテーブルにはシャケおにぎりと
小松菜のお浸し、昨日の夜に日向が漬けていた
大根の浅漬けが一食分綺麗によそってあった。
音羽はこの家に1人なのを悟ると、横に添えられていた紙を手に取った。
(あさりのお味噌汁弱火で温めて食べてね。母)
「はーい。
おにぎり…
美味しそう。」
音羽は寝ぼけたまま惰性でテレビを付けた。
日向はカフェで忙しくしており、この時間はいない事が多いのだが、ダンも最近出かけることが多くなった。
「ダンは不良少年…っと、」
音羽はあさりのお味噌汁を火にかける。
惰性で付けたテレビからニュースが流れる。
(——日本時間の今朝7時頃、ニュージーランドで大規模な地震が発生し、現在分かっているだけでも死者——…)
…
(——アフガニスタン紛争によるアメリカをはじめとする連合軍の空爆で死亡したアフガニスタンの民間人の数は数百人に及ぶとされています——…)
…
(アメリカのマイアミで少年による銃乱射事件が発生し、少年はその後自殺を図り…)
音羽はテレビを消すと、床に
…
「あー。
うるさいな。そんな事言われなくても分かってるのに、どうにも出来なかったんだよ。
どうすればよかったの。そんなに責めないで。
私に言わないで、ごめんなさい、ごめんなさい、分かってる。私がやればよかったの。私だったら救えたのに。今度はきっと助けるからね。あ、でももう死んじゃったんだもんね。ごめんね。うううん。ありがとう。そうするね。うん。大好きだよ…」
コンロからあさりのお味噌汁が噴きこぼれ、火が止まった。
太陽の光が音羽を照らす。
眩しそうに太陽を見上げる音羽は白く細い手で光を遮るとそのまま太陽を握り潰した。
すると太陽は厚い雲に覆われて、空はたちまち暗くなり、その雲は雨を降らせ太陽はどこかへ消えてしまった。
*****
雨の中、傘もささず裸足で歩く女の子。
その顔は綺麗に笑い、何かを口遊んでいる。
雨が止んだ。
女の子は空を見上げる。
「風邪。
引いちゃいますよ。」
静かに傘を差し出した男が女の子に触れようとした瞬間——。
————!!!
男の差し出した傘は宙に舞い、降り頻る雨と一緒に地面に落ちた。
「妹に触るな。
誰、あんた?」
そこには音羽を抱き抱える日向の姿があった。
音羽はまだ何かを口遊んで意識がないようだ。
「音羽、風邪引いちゃうね。
カフェの方が近いからこのまま連れて行くよ。」
日向はずぶ濡れの音羽に自分の着ていたジャケットを被せるように着せると抱き抱えてその場を後にした。
1人その場に取り残された男は落ちた傘を拾う事なく立ち去ろうとする。
そこに傘を拾う1人の女の子が近づく。
その女の子は男に傘を差し出すと冷たく言い放つ。
「鍵の分際で、勝手に行動するとは
お前殺されたいのか?」
女の子は濡れた地面に男を
男は黙ってそれに従い、微笑む。
「嫉妬ですか?あなたらしくない。
私はあなたがいなければこの世に存在する価値すら無いというのに。
男の視線を無視して、女の子は音羽に思いを馳せていた。
その女の子は日向に守られている意識のない音羽を見つめながら独り言のように何かを口遊んでいた。
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