茶番劇は誰の為の物?

とにかく乾杯いたしましょう


 お料理を運び、固形燃料に火をともし……


「お父様、準備が出来ました、乾杯の第一声をお願いします」


「皆、今日は我が娘、雪乃が私を慰労しようと開いてくれた宴である、堅苦しいことはなしだ、悪いが料理も酒も各自自分で取りに行ってくれ」

「それとまだ決まっていないが、雪乃の愛人の身内も招待されている」


「現在、皇太子は、雪乃を口説いておる、なかなか雪乃は手ごわく、苦戦中と聞いておる、しかし事が首尾よくいけば、現在、雪乃の愛人は皇太子の妾、側室となる」

「まだ早いが、息子がこの困難な作戦を成功させることを祈っておる、では、乾杯をしようではないか!」


 お父様、ここで、そのような事を……


「陛下、まだ決まってはおりませんよ、皇太子が下手をうったら、なんとするのですか?」

「母上、私は初志貫徹、ご懸念には及びません!」


 なんですか、この茶番劇は……


「皇后よ、その時は帝国中から、雪乃ににあう婿を探すとしようぞ、儂はあくまで、雪乃の幸せを願うものである」


 もうだめね……


「お父様、皇太子殿下は男らしい方ですが、私が卒業するころには、女心の一つぐらい、ものにされるのではありませんか?」

「でもお父様、その時は、この私の小さい可愛いお尻で、しっかり敷かせていただきますが、構いませんよね」


 お父様、物凄くお笑いになり、

「そうか、雪乃の尻は後五年ほどで大きくなるのか、構わぬぞ、むしろ尻に敷いてくれるほうがよいぞ、大体余の見るところ、皇太子は雪乃にかなわぬと思う」


 お母様が、

「皇太子、どうなのですか?」

「母上、私は雪乃さんの尻になら、敷かれても致し方ないと考えます、ただ、少しばかり雪乃さんの目を盗んで、よからぬことぐらいは、なんとか出来るとは思いますが?」


 さらにお母様が、

「そのぐらいなら、掌の上と見逃す度量は、雪乃にはあるはずですからね」


 もう、どこまで茶化すのよ!


「お父様もお母様も、その辺にしませんか?お料理が冷めますから」

「そうだな、とにかく、乾杯だ、余の意図するところを汲んで唱和してくれ」


 まったく、食えないですね!


 とりあえずビールとジュースを渡し、各自でタンブラーに注いで頂き、そして乾杯が終わり、皆さん、仕切りトレーをもってお料理を取りに……

 一応ね、後の事を考えて、使い捨てでプラスチック製品にしました。

 アメリカの某社の小売向けブランドMo●a●kシリーズです。

 これ、本当に使い捨て?


 タンブラーもありますからね、まぁ乾杯したときの音はね……ちょっと……プラスチックですから。

 これ、私が望めば、回収破棄できるのですよ、これが紙製ならアウト!その上価格は2,000円以下ですからね♪頭良い雪乃さん♪


 皆さん、ワイワイとお料理をとりに行かれています。

 ふと見ると、久光お兄様が、甲斐甲斐しく慶子様の使いぱしりをしています、横でハル様も慶子様にお料理なんて、運んでいますよ!

 間違い無しに、朝比奈侯爵家の権力者は慶子様……あの久光お兄様がね……ヒップ89センチに敷かれて……


「雪乃様、何を笑っておられるのですか?」

 洋子様が、オレンジ・ジュースを持ってきてくれました。

「いえね、実家の久光お兄様が、お嫁さんの慶子様に、しっかりとお尻に敷かれているようで……あの、謹厳実直で寡黙なお兄様がとおもうとね」


「ところで、母と弟がご挨拶したいと……」

「ごめんなさい、まさか、お父様と皇太子殿下が、あんな茶番劇をするとは思いませんでしたから、お母様、驚かれたでしょうね」

 洋子様のお母様、洋子様とよく似ておられますね。


「はい、少々驚きました、洋子の立場が、こんなになっているとは、思いも寄りませんでした」

「なぜ、このパーティーに呼ばれるのか、疑問でしたが、理解出来ました」


「雪乃様、洋子は雪乃様に差し上げた娘、皇帝陛下はあのようにおっしゃっておられましたが、雪乃様のお気持ちのままに」

「ゆめゆめ洋子のためとかで、意に沿わぬご結婚など、なされないで下さい」

「ありがとうございます、でも、ああまで開けっぴろげに云われると、断れないと内心は覚悟しております」


「それに、ここだけの話ですが、お尻に敷くと宣言したのに、陛下も殿下も構わないとおっしゃられるとね」

「この調子で卒業まで口説かれると、女としては、心も揺らいでしまうでしょうね」

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