怒濤の口説き


 メイドさんの一人が、

「武子様、ありがとうございます、皇太子殿下、私たちは生涯、雪乃様のおそばにお仕えする覚悟です、宜しくお願い出来ますか?」

「無論だ、私は雪乃さんの意思は常に尊重する」


 えっ、思いも寄らぬ展開ですが……


「雪乃さん、前にも言ったでしょう、『財』が増えれば、こうなるのよ」

 おばあ様のお言葉です。


 ……


「メイドさん達、雪乃さんを宜しくね、それとお立場ですが、『巫女』ですよ」

「ご心配は無用です、永年奉公したときより、私たちのご主人は雪乃様です」

 この一言で、私は『巫女』とは、非公式の愛人候補?を意味すると知ったのです。


 ……


「雪乃さん、私は約束どおり、これから口説かせていただく、愛しているよ」

 えっ、そんな、面と向かっていうの、ご両親の前でいうの!


「……お手柔ら……かに……」

 あぁぁ、完敗ですよ……


「ところで、文子さん、洋子さん、ダイアナさん、時々、この雪乃さんの家に、私が訪れたら、歓迎してもらえるかな?」

「メイドの方々も、追い返さないでくれるかな?」


 文子さんが、

「歓迎いたします、皇太子殿下」

 なんて、云っています。


 ここで、お父様が、

「そうか、息子よ、励め」

 なんて、いうのですよ……


 お母様と武子様が、

「ねえ、武子さん、昔を思い起こしますね♪」

「そうですね、こうして陛下に口説かれましたね♪」


 えっ、皇帝陛下、逃げ道を断って、お母様を追い込んだの!


「ふ・ふ・ふ、雪乃、私はね、こうして口説かれたのよ♪でも、嬉しかったのよ♪」

 たしかに、そう言われれば……


「さて、こうなったら、皇太子の頑張りだけね♪そろそろ時間よね、後の招待客が来るようよ♪」


「そうですね……完敗です……殿下、あと四年半、愛を囁いてくれますか?」

「当然だ」


「あらあら、雪乃、なかなかね、皇太子、最後で押し切れなかったわね!」

 お母様、なんてことをおっしゃるの!


「まぁ、今日は目出度い会合となった、この後、宴会かの、おい、息子よ、乾杯だな!」

「父上、応援をお願いします♪」


 私、よく考えると、誰も味方がいないのでは?

 もうね、皇太子殿下のお嫁さんも致し方ないかな……


 心の底では、お母様ではないのですが、嬉しかった……

 私も愛するより、愛される方がいいわ……


 愛しているって、臆面も無く云われると……どぎまぎするけど……

 このまま……強引に引きずっていって欲しかったり……

 でも、キスもしてもらってないし……


 あぁぁぁ、どうしよう、どうしましょ、ねぇ、どうすればいいの……


 ……皇太子殿下……この、胸のときめきを…… 

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