秋深し、私は何をする人ぞ

陸軍ですから、抜刀隊がよろしかろう


 翌日、私は許可をもらえたことを報告しました。

 帝都第一衛戍(えいじゅ)病院への慰問は、翌週の木曜日の午後となります。

 

 何でも女学生の歌と、楽曲演奏、そしてお菓子の差し入れ……

 お姉様方が、お菓子なんて総出で作っておられます。

 前日からですよ。


 どうやら、『蒸し饅頭』、それも重曹を使うので田舎饅頭のようです。


 『あんこ』は?なるほど、乾燥アンコですか……有ってもおかしくはないのでしょうね……

 乾燥アンコなら、女学生でもそれなりに作れますし、『田舎饅頭』なら案外、美味しく出来るはず、さすが、5年生のお姉様方ですね。


 自宅で真似して私も作ってみると、見事に出来ましたね。

 いろいろ作りたかったのですが、明日、慰問がありますので、さすがにおとなしく、その日は早めに寝たのです。

 だってね、声に影響してはいけないでしょう?


 後日、いろいろ試して見るつもりです♪


 木曜日の午後、私たちは電車に乗り、帝都第一衛戍(えいじゅ)病院へ……

 荷物は午前中に陸軍の輜重兵部隊の方達が、三九式輜重車という、馬で曳く荷馬車で運んでくれました。

 慰問が終わったら、再び学校まで運んでいただけるようです。


 結果は大成功ですよ、患者さんたちに、ささやかですがお饅頭を一つ配り、何とか動ける方には、病院のホール?待合のような場所に集まっていただき、歌とか楽器の演奏とか……

 大体、陸軍ですから、女性は一人もいないわけで、そんな汗臭い世界に、女学生の慰問ですからね……

 100パーセント、歓迎される訳です!


 丁度、午前中に慰問に来られていた皇后陛下のご一行も、女学生が慰問に来るとお聞きになり、時間を多少延長して、私たちの歌とか演奏をお聴きになったとか……

 女学生さん達、感激していたようです。


 私はというと、やはり歌など歌わされました。


 やはりここは陸軍の病院、『抜刀隊』を歌いました。

 いわゆる陸軍分列行進曲、陸軍兵士なら誰でも歌えるわけです。

 この歌詞、この世界でも生きているようですね。


 陸軍の兵隊さん達、大合唱してくれたのですよ♪

 感激しましたね、だからアンコールに答えたのです♪


 こうなったら『日本陸軍』ですね、この世界では『帝国陸軍』とよばれており、歌詞の10番はありません、1番の『出征』からはじまり、9番の『凱旋』で終わるのです。

 当然ですが、追加された『爆撃隊』とか『戦車隊』とかはないのですよ。

 『電信隊』はあっても良いような……


 さらに盛り上がったのです、そして慰問は大成功に終わりました。

 後日、帝都第一衛戍(えいじゅ)病院院長様から、学校へ感謝状が贈られたと聞きました。


 その日の夕方、お母様がやってこられました。


「雪乃、良かったわよ、歌上手いのね♪兵士達が大合唱していて、軍医の方々も驚いていたわね」

「陛下が聞きつけ、残念がっていたわよ♪」


「例のお話ですが、お父様のご都合は?」

「来週の日曜日の夜ではどうかしら?」

「心を込めて歓迎いたします、でも、やはりお酒は必要ですよね?」

 かなり、お母様はお笑いになりました。


 お客様は、お父様、お母様、おばあ様、そして武子様と皇太子殿下……

 この方達だけは、少し早く来ていただきます。


 接待するほうは、私、文子様、洋子様、ダイアナ様……


 最初だけは重陽の節句を祝うことで、室内で慎ましくおこない、その後、宴会?になだれ込みということです。

 宴会?については、まだ九月の上旬ということで、中庭でおこない、やはりバイキングとなりました。

 料理は私が作ります。 

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