第54話 余裕

 空飛ぶ物体は、かなり大きく、その影は太陽を遮り、大きな闇を作り上げる。


 「なんだよ、物騒だな、こんなの俺の知ってる地球には、なかったはずだけどな」


 「そうなのですか?では、一体この大きな鳥はなんでしょうか…」


 「鳥ねぇ…それならまだ、可愛げがあるってもんだけど、どうやら、そういう類いの物じゃない、らしいな…」


 デンジュ達が、思案していると、動きがあった。

 

 ヴォーン


 低い中音域が、汽笛の様に鳴ると、何かの鉱物製であろう、巨大な四角い物体は地上に向かって来た。

 

 どうやら、デンジュ達諸共を押しつぶしてまで、着陸する様子だ。


 「うぁわー、潰れるー、どうしよー、どうしよー」


 「デンジュさん、どうしましょう?この影の外へ逃げるには、時間が…」


 「そうだね…逃げるには、もう遅いかな、逃げるにはね」


 慌てるメリュカ達とは裏腹に、全くの平然、冷静な程、冷静なデンジュ、それは大賢者となった者だけが、辿り着く境地なのだろう。


 「あぶない、あぶない、早くしないと潰されちゃうよー」


 「クンバー、黙ってろー、さぁさぁ、やりますかな…」


 大きな物体は容赦なく、絶え間なく、デンジュ達を押し潰さんばかりに、無情にも下降してくる。

 

 もしも、デンジュが大賢者でなければ、ここで、全てが終わったのであろう。


 しかし、さすがに、大賢者、ここからの巻き返しがあるのであった。

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