第52話 王の悩み

 「アギよ、今までよう言わんかったけど、わしな、カタカに来てから、妙に体が硬くなってるんやけど、なんでかわかる?」


 「はい、それは、時差のせいでしょう」


 「時差?ドメイルとあまり変わらん気がするけどな」


 「確かに、1日24時間という点は変わり無いのですが、カタカの1年はドメイルの凡そ10年分に相当するようです」


 「10倍も?えらい差があるな」


 「ただし、この差も変動する様で、その時々で時の差は無い時もあれば、100年程の開きが出たりする場合もあるのではないかという、専門家もいるのですよ」


 「そうか、わしらでは分からないことがあるんやろな」


 「はい、しかし、王は石であるのに、体が硬いとは、それもまた、この世の不思議ですな…」


 「アギよ、それは言うな…あと二人だけの時、王って呼ぶの辞めてな、余計に硬くなるやん」


 「は、御意に、石之助殿は本来、ゆるキャラ寄せに出来てますからな」


 「それも言わんといて、王の振る舞いって大変なんやで…まっ、分からんやろな。せや、ドメイル行きも着々と進んでいるらしいし、楽しみになって来たな」


 「ええ、石之助殿の故郷ですからな」


 「ああ、そうや…」


 カタカの空は朧な色、石之助は、それを見遣っていた。

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