第49話 互いの立場とこれから。

 「きゃー!」


 「ヒヒーン!!」


 ウマと娘の鳴き声が洞窟に反響、緊張が走った。


 「あなたは誰ですか!それ以上近付いたらタダではすみませんよ!」


 「安心して、何もしないよ、俺はデンジュ、未来から来たんだ」

 

 「デンジュ…未来…変な服…??」


  思いもよらない未来からの来訪者に戸惑いつつも、目の前の不思議な服を着た男への興味が勝る、メリュカの好奇心は天井を知らない。

 

 その頃、カタカでは。


 どっ、スーン!


 「石之助殿、着きましたよ、ここがカタカです」


 「おっ、なんや、あんまりドメイルと変わらんようやけど、なんというか、寂しい感じやね」


 「ええ、そうでしょう、このカタカはサミシサの吹き溜り。何処からともなくサミシサが集まって来るんですから…」


 「なんや?それってめっちゃ悲しいやないか!普段の生活がそのサミシサのせいでツマラナクならんか?」


 「ふふ、これもおかしな事ですが、慣れてしまうんですね、この環境にも。以前はこのカタカも穏やかでした、あの門が現れるまではね…」


 「あの門…ドメイルにも出たやつやろな。となればアギさんのところも被害者、ちゅうことか…なんや、複雑な事情になってきたで」


 「ふふふ、そうですね。ですが、石之助殿がカタカに来てくれて状況は変わるでしょう。まずは私のボス、カタカの王をご紹介しましょう」


 「カタカの王様か、こりゃしっかりせなあかんやつやな。堅苦しいのは好きやないねんけどしゃあないなぁ、行こか」


 「ふふふ、さあ、こちらです」


 カタカにはカタカの事情がある、どうもそれは、ドメイルにはうまく伝わっていない、お互いが被害者であるような状況が何故か敵対関係になっているのだ、これはどんな因果であるのか、こればかりは誰にも分からないのだ。


 そして一方、その頃ドメイルでは。


 「ヒヒーン!!」


 「大丈夫、サンディ、この人は悪い人では無さそうよ。なんとなく分かるの」


 「さすが、ミュウカちゃんのひいひいひい…いや、クレスタイン家のお姫様だ。不思議な力を持っているんだね」


 「ミュウカ?その方は知りませんが、何故私がクレスタインだとお分かりに?」


 「だから言ったでしょ、俺は未来から来たの」


 「未来ですか。すぐには信じられませんが、嘘ではなさそうですね。それで一体、未来から何のために?」


 「何のためかって、それはさ…あれ?なんだっけ?」


 「………。」


デンジュは困った、ここへ来た理由が特に見当たらないのだ、薄暗い洞窟でポカーンとしてしまった。

 

 とはいえ、ここにいても仕方ないので、外に出てみんなと合流することにした。


 「うーん、理由はわからない、でもここに居ても始まらないし、一旦外へ出よう」


 「はい、でも、外では石之助さんが」


 「大丈夫、それなら解決済みだよ」


 石之助とアギがカタカへ行ったことなど知らぬデンジュは、メリュカとサンディを連れて外へ出ると、其処にはニヤニヤ笑顔のクンバが待っていた。


 「おかえりー、デンジュ君!」


 「おう、戻ったぜ、それで石之助達は?」


 「ああ、そのことだけどね、二人はカタカへ旅立ちましたー」


 「なんだって!なんでまた」


 デンジュは驚きとショックで白髪が2、3本増えた。

 

 蒸発の経緯は、要約するとデンジュの闇魔法の後遺症でこの世界をバックれた…という事になった。

 

 メリュカは消えた石之助の事を心から慕っていたので、その後、暫く何も言わず黙っていたのだが、このままでは始まらぬと、自ら話し出した。


 「デンジュさん、あなたは悪くない。きっと石之助さんもそう思っているはず。起こったことは仕方ないし、前に進み以外に道は無いわ、とにかくこれからどうするのが最善か、やるべき事を見つけましょう!」


 メリュカの力強い発言は、デンジュの心に火を点けた。


 「そうだな、そうしよう!」


 (と言ってもな、次はどうすればいい?分からんな、多分クンバだろうな、鍵になるのは)


 「おい、クンバ、どうするんだ。これから先何も見通しが立たないぞ」


 「くーっ、楽しいね!こういう状況で知恵を絞るのっていいねー!」


 「答えになってないぞ、楽しくないだろうこんな状況」


 「はいはいー、では次なる目標を伝えればいいんでしょ?じゃあ言うよ!それはね…、子孫を残せ!!だよー」


 「子孫を残す!!!」


 クンバのその言葉に、何となくメリュカとデンジュは、お互いに距離をおいたのであった。

 

 「ぷぷぷ、二人共顔が紅いよー、ぷぷぷ、どうしてー」


 「クンバさん、詳しく教えて下さい、私が出来ることであれば協力します」


 「さすが、メリュカお嬢様だ!どこかのインチキ大賢者とは格が違うね、ぷぷぷ」


 「おい、インチキはいらんだろう、格は違うのは認めるけど。ところで、その子孫だけど、誰の子孫なんだ?」


 「ぷっぷー、知ってるくせに!もう、恥ずかしがらなくていいのに。メリュカちゃんだよ、クレスタイン家の血。ここから新たなドメイルが始まるんだ、大事な大事なはじめの一歩なんだよ。だから二人には頑張ってもらうんだ!」


 「やっぱりか、俺なのか、その役目は。俺にはミュウカちゃんという彼女がいるんだぜ、クンバこれは酷だよ」


 「ぷぷー、勘違い甚だしいなデンジュ君は、二人で頑張るのはメリュカちゃんのお婿さん探しだよ!」


 「クソっ、クンバ!ハメたな!」


 「クンバさん、私のお婿さんを探すのであれば、ドメイルでは無理だと思いますが」


 「さすが、メリュカお嬢様は冷静だ、その通り、ドメイルには居ない。お婿さんはトプロに居るんだよ!」


 「トプロだって!!」


 故郷、地球に行ける!その事に思わず大声を発したデンジュは興奮した、それはやっぱり自分の故郷だからである。


 果たして、お婿さん探しはどうなることやら…

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