第45話 タイムワープ
常闇のような地下に、点々と足下を照らす小さな照明を頼りに、ちっさい物体がデンジュの部屋へ向かっていた。
その物体は、デンジュが眠ったのを確認すると、尖った頭で静かに扉を開けた。
物体は、そう、クンバである。
クンバは、デンジュの枕元で座すると、何やら、ぶつぶつ唱え始めた。
「ででん、ででん、でん、ででん。ででん、ででん、でん、ででん…」
繰り返す、ででん、でん、というフレーズに室内の重力は歪んだ。
さすがのデンジュもこれには気付き、目を覚ました。
「ん、ふぁー、なんだ、体がグラグラするな…」
「ででん、ででん、でん…」
「ぬぉー!お前、クンバ。なんでここにいるんだよ!しかも、ででん、ででんってナニ!」
時すでに遅し、時空の狭間は開かれた。デンジュは一瞬にして、どこか見覚えのある様な野原にワープしたのだ。
「はっ。なんだよ、此処」
「へいへい、デンジュ君、気分はいかがかな?」
呆気に取られるデンジュに、話しかけたクンバは何故かチャラかった。
「うぉっ!お前、やっぱり話せたのか!一体何したんだよ!」
「いぇーい、ナニって?だって、大賢者になりたいんでしょ?だからさ」
「そりゃ、なりたいけど、急過ぎるんだよ。突然こんな場所にワープさせて、で、此処はどこで、これからどうするんだ?」
「ひぇーい!さすがデンジュ君、聞分けが良いっ。そうだね、まずは此処の説明だ、此処はね…なんと大昔のドメイル、メリュカの時代なんだよ」
「ほんとかよ、それって何万年も前だぞ、そんな事出来んのか?」
その質問に、クンバは、にやけたまま宙に浮いて、小さな体をクルクル回して、楽しみ始めた。
(クンバの奴、俺の事、舐めてるな…)
デンジュは、カチンときてクンバを両手でバッと掴むと、目の前に引き寄せて、顔面スレスレで、「答えろ」と凄んだ。
これには、クンバも参った様で。
「い、いえーす。タイムワープ出来るよ、但し特定の条件が揃っていないとダメなんだよ。グフっ、もう離してよ」
「よし、分かった、離してやる。じゃあ今回はその特定の条件が揃ったんだな。で、俺はこれからどうすればいい?」
「いいかい、これからメリュカに会いに行くんだ。そしてメリュカと一緒にある事をしてもらう。それだけだよ、簡単だろ?」
「おいおい、メリュカさんとある事ってなんだよ。俺にはミュウカちゃんがいるんだぞ、いくら運命と言えども、そういっただな、んん、、倫理に背く事なんて俺には出来んぞ」
「ぷっー、デンジュ君はやっぱり変態さんだね、ぷぷぷっ、倫理っ、ぷぷぷっ」
「何笑ってんだよ!」
イラッとしたデンジュは、再びクンバの首根っこを掴んだ、今度は片手で。
「グフっ、ご、ごめんなさい。もう笑いませんし、ふざけませんから」
「いや、ダメだ信用できん、まず此処がホントにメリュカさんの時代か確かめてからだ、証拠を見せてもらおうか」
「グっ、分かったよー、じゃあ案内するから僕の言う通りに着いてきて。あっそうだ、飛べるよね?」
デンジュは頷くと、クンバの道案内に従い空を飛んでいくのであった。
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